AI

2026.01.15 13:00

PCの巨人、LenovoがハイブリッドAI戦略で仕掛けるAI体験の主導権争い

Lenovoが基調講演で掲げた「AI for All」は、よくある”標語”ではない

基調講演ではNVIDIAとの提携が発表された。

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NVIDIA AI EnterpriseとLenovoの液体冷却技術などを組み合わせ、インスタントに導入できる「AI Factory for the Enterprise」というメニューを共同で提供する。企業が自社データセンターで、開発から推論までを一気通貫で回すための環境を用意可能にするメニューで、企業がインハウスでAIを導入するリードタイムを大幅に縮めるのが狙いだ。

またAMDともエンタープライズ領域で協業する。

EPYC搭載のAI推論向けサーバー「ThinkSystem SR675 V3」を、AMDのリサ・スーCEOと発表した。AIを「企業自身が持つデータのある場所」へ近づけるのが狙い。ハイブリッドAIを企業の運用に落とし込むためのピースだ。

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壮大な”設計図”を待ち受ける厳しい現実

Lenovoが基調講演で掲げた「AI for All」は、確かに未来を指し示している。

しかし、設計図が正しかったとしても、それが素直に市場に受け入れられるとは限らない。最大の逆風は、コストの大幅な上昇だ。

IDCによると、AIインフラ需要に起因するDRAMおよびNAND価格の上昇が、2026年のPC価格上昇へとつながり、総売り上げは9%押し下げる可能性があるという。AI対応が部材コストに直結する局面だけに、AIの普及、活用を促すほどPCの価格が(上昇することで)壁になるという皮肉が起き得る。

もちろん、Lenovoの戦略が業界の潮流と一致しているのも事実だ。

半導体の中でAI処理を行う「エッジAI」は、プロセッサ能力の高まりとともに大きなテーマとなってきている。問題はあるが、いずれは解決されるというのがコンセンサスだろう。

それでも根本的な問いは残る。アップルの強固なエコシステムや、グーグル/サムスン連合が支配するAndroid市場の中で、Lenovoは「統一されたAI体験」を日々の習慣にまで落とし込めるのか。ハードの強みを足場に“パーソナル・デジタルツイン”を掲げる狙いは理解できるが、体験の継続性という観点では先行勢が強い。

Lenovoの挑戦は、AIを真に「パーソナルで役に立つ」存在へ押し上げるための重要なビジョンだとはいえる。

だが結実させるには、部材コストという物理的制約を乗り越え、ユーザーが対価を払いたくなる“手放せない体験”を、早期に積み上げる必要がある。

PCの巨人が投じた一手は、新製品発表の寄せ集めではない。自らの未来を賭けたアーキテクチャの提示である。AIが「実装」を求められる2026年、その設計図がどこまで現実を引き寄せるのか。答え合わせは、ここから市場で始まる。

編集=安井克至

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