グローバル対応力を鍛える「場のロールモデル」が必要だ
多国籍チームでの意思決定、時差や距離などのハードルを乗り越える行動力、英語での発信力。これらはいずれも、「グローバル×スケールアップ」を目指すうえで不可欠なベーシック・スキルだ。TGICは、多国籍チーム編成の機会と英語での情報発信、異文化交流の機会をセットで提供し、競争と協働の両方を通じてこれらのスキルを鍛える設計になっている。
アントレプレナーシップの醸成に力を入れる教育機関が増えるなか、いま必要なのは、グローバルな視点を携えた「場のロールモデル」ではないか。複数の大学を中心に産官学が連携し、「越境学習」の場を通じてグローバル対応力を鍛える国際ビジコンから学べる点は多い。
「大学は起業家を育てる場所ではない」。こうした声があるのも事実だ。だが、社会で活躍できる人材を輩出することに異を唱える人は少ない。ビジネスを興すのも、仕事を通じて社会課題に挑むのも、社会で活躍する範疇に入る。だとすれば、大学が主体となって国際ビジコンの場を提供することには一定以上の価値があるはずだ。
そして、TGICの本質は起業礼賛にあるのではない。異なる言語、文化、価値観の間で正直に言い、真剣に聞き、合意を形成する——そのプロセスの意義と、挑戦することの尊さにある。
「審査員特別賞」を受賞したブルガリアのペトロフは、「東京で過ごした3日間で、私たちは多くのことを学び、スキルを向上させ、未知の国の文化に触れることができました」としたうえで、こう話す。
「TGICのようなイベントは、将来的に新たな事業パートナー候補になりえる、志を同じくする人たちとの出会いの場です。これからも、イベントへの招待には積極的に応じたいと考えています」(ペトロフ)
インドネシア出身のセバスチャンも、「グローバル拠点である日本は、異なる文化や分野、アイデアが交わる場として、これからさらに成長していくのではないかと思います」と期待を込める。
「世界中でさまざまな困難な出来事が起こり、将来に不安を感じることもあります。でも、(TGICに参加した)皆さんと話すなかで前向きな気持ちになりました。仲間ができたような気がします。TGICのような場は、参加者が国や背景を越えて意見を交わし、未来を共に見据える機会を生み出してくれると感じます」(セバスチャン)
彼らの言葉は、そのまま東京への提案と受け取ることができる。世界中の若きイノベーターにとって、東京が「仲間を見つけに行く場所」になる。スタートアップ戦略2.0が本気で狙うのは、そこだろう。
「挑戦者が生まれ、世界から集まり、挑戦者を応援する東京へ」──このビジョンを机上の空論で終わらせないためにも、「グローバル×越境学習」が生む可能性と広がりに期待したい。


