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2026.01.16 13:15

東京は「世界の挑戦者のハブ」になれるか。大学発の国際ビジコンが拓く「シン・エコシステム」の可能性

wichayada suwanachun / Getty Images

共通のゴールがあれば、文化や言語の違いは大きな価値になる

12月14日、午前11時。東京都が運営するイノベーション拠点「Tokyo Innovation Base」(TIB)には、国内外から100人を超える学生や産官学の関係者が集まっていた。揃いのTシャツに着替えて出番を待つチーム。ピッチの内容を想起させるコスチュームで整えるチーム。布製の頭飾りをかぶったインドネシアの学生たちの姿も見られる。

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TGICには世界40カ国以上から204チームの応募があった。最終選考に残ったのはわずか12チームだ。ファイナル・ピッチのステージでは、学生たちが流暢な英語と堂々とした立ち居振る舞いで自分たちのビジネスプランを披露していく。気候変動対策、金融ソリューション、医療システム、女性向けのウェルネス製品。テーマは多様だが、いずれも世界の「困りごと」を起点にした提案ばかりだ。

ひときわ目を引いたのが、留学生や他大学の学生とタッグを組むチームが多かったことだ。TGIC実行委員会委員長で中央大学副学長の国松麻季は、TGICの狙いと意義をこう評する。

「社会に出ると、海外出身の方をはじめ、自分とは異なるバックグラウンドを持つ人たちとチームを組んで仕事をすることがあります。大学時代に、そうした経験を『先取り』できる場を提供し、その楽しさや(視野や可能性の)広がりを実感してもらったうえで、学生たちを社会に送り出したい。チームメイトとしてひとつの目的に向かい、互いに切磋琢磨する。チームが多様であるほど、その意義は大きくなると思います」(国松)

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世界40カ国以上・204チームの応募のなかから、最終的に12チームがファイナル・ピッチに挑んだ。この日のために、ブルガリアやインドネシアから来日した学生もいた
世界40カ国以上・204チームの応募のなかから、最終的に12チームがファイナル・ピッチに挑んだ。この日のために、ブルガリアやインドネシアから来日した学生もいた

ファイナル・ピッチと表彰式が終わり、懇親会が始まると会場の熱量はさらに高まった。受賞パネルを片手に、ライバルチームのメンバーと写真を撮る人。インドネシアやブルガリアから来た学生たちと意見交換する人。審査員を相手に自分たちのアイデアを熱く語る人。そこにあったのは、「英語の場では控えめになりがち」という紋切り型の日本人像ではない。むしろ、越境の場に身体ごとなじませにいく若者たちの、軽やかな熱気だった。

BECCS(バイオマス燃料を燃焼する際に発生する二酸化炭素を回収・貯留し温室効果ガスの排出を抑制する技術)を最適化するAI統合システムを提案して「きらぼし銀行賞」を受賞した中央大学のチーム「350 Unit」の大森茂樹、ホアン・ミン・トゥアン、キム・フィゴンは、日本・韓国・ベトナム出身の3人でチームを組むことで「特定の国にとどまらず、『どのようにビジネスをグローバルに展開し、世界にインパクトを与えるか』を真剣に考えることができた」と話す。

「共通のゴールを持っていれば、文化や言語の違いは障壁ではなく、むしろ大きな価値になるということを学びました」(350 Unit)

一方、「最優秀賞」に輝いたマウントシェフのメンバーでインドネシア出身のヴィンセント・セバスチャンは、TGICで得た学びを2つ挙げる。「正直さ」と「柔軟でいること」だ。

「物事の捉え方や大切にしている価値、重視するポイントは人それぞれ異なります。そうした違いこそが、これまで見過ごされてきた問いを見つけ出し、新たな機会として捉え直す出発点になりました」(セバスチャン)

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文/瀬戸久美子 写真提供/ツクリエ

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