宇宙

2026.01.16 10:30

ハッブルを超える民間宇宙望遠鏡「ラズリ」、グーグル元CEOが2029年の打ち上げ計画を発表

ラズリ宇宙望遠鏡 (c)Schmidt Sciences

ラズリ宇宙望遠鏡 (c)Schmidt Sciences

2026年1月7日、グーグルの元CEOであるエリック・シュミット氏とその妻が、ハッブル宇宙望遠鏡よりハイスペックな「ラズリ宇宙望遠鏡」を打ち上げる計画を発表した。この機体は可視光と近赤外線で観測を行う宇宙望遠鏡であり、主鏡直径は3.1m。そのサイズはハッブルの2.4mを上回り、集光面積は1.7倍におよぶ。同機の運用が実現すれば、本格的な民間宇宙望遠鏡が史上初めて誕生することになる。

シュミット氏によるこの計画は、アリゾナ州フェニックスで開催されたアメリカ天文学会(AAS)のミーティングで発表された。シュミット氏と妻のウェンディ氏は2024年にNPO「シュミット・サイエンシズ」を設立しており、今回のプロジェクトには同団体の資金が当てられる。予算は明らかにされていないが、機体開発と打ち上げのコストは数億ドルと予想され、開発期間を3年以内に抑え、2029年頃の打ち上げを目指すという。

また、このプロジェクトには地上の天文観測施設も含まれ、テキサス州、ネバダ州、アリゾナ州の各拠点に新たな観測所が建設される。ラズリ宇宙望遠鏡を含むこれらの施設は「シュミット観測システム」として連携し、AIを活用した先進コンピューティングによって、従来よりも高速かつ大量のデータ処理を目指す。

3つのハイスペック観測機器

シュミット・サイエンシズによるラズリ宇宙望遠鏡は、近地点約7.7万km、遠地点約27.5万kmという、非常に高い高度の地球周回軌道(楕円軌道)に投入される。これは近地点が静止軌道(約3万6000km)の2倍以上、遠地点が月までの距離(38万4400km)の72%に達する高度だ。こうした高軌道が採用されるのは、衛星コンステレーションによる干渉を避けるためでもある。

同プロジェクトの責任者ピート・クルパー氏によると、「この機体開発の焦点のひとつは、リスクを観測機器に置き、宇宙機本体には置かないことだった」という。つまりトラブル発生率の高い新規設計は観測機器に集中させ、姿勢制御装置、通信機器、コンピュータなどの航法システムは、すでに宇宙飛行実績のある既製品で固める。この方針によってリスクを最小化するとともに開発期間を短縮する。クルパー氏は、元NASAのエイムズ研究センターのエンジニア・ディレクターを務めた人物でもある。

彼らが注力する新規設計の観測機器とは、広視野カメラ「WCC」、系外惑星コロナグラフ「ESC」、分光計「IFS」の3点だ。

ラズリ宇宙望遠鏡の主要機器 (c)Schmidt Sciences
ラズリ宇宙望遠鏡の主要機器 (c)Schmidt Sciences

23個の大型CMOSセンサーが搭載された広視野カメラ「WCC」では、広範な領域から観測すべき天体を探すだけでなく、高速電波バースト(FRB)やパルサーなどの瞬発的なイベントを捕捉する。その天体の変化を同一フレーム内で追いつつ、数ミリ秒から数秒という極めて自由度の高いタイムスケールで連続撮影・測光することが可能だ。

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編集=安井克至

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