宇宙

2026.01.16 10:30

ハッブルを超える民間宇宙望遠鏡「ラズリ」、グーグル元CEOが2029年の打ち上げ計画を発表

ラズリ宇宙望遠鏡 (c)Schmidt Sciences

「ESC」(系外惑星コロナグラフ)と呼ばれるカメラでは、明るい恒星の光をピンポイントで隠し、その周りを周回する惑星だけを浮かび上がらせる。そのコントラスト(光度差)は10億分の1レベルまで検出可能。この特殊なカメラによって太陽系の外側に存在する惑星(太陽系外惑星)を探し出し、その大気成分までを明らかにする。

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分光計「IFS」がカバーする波長域は400nm(青)から1700nm(近赤外線)と広く、色の違いを見極めるスペクトル分解能(100〜500)は多様な天体を同時に効率よく調査する。主鏡が捕捉した光をこのIFSで処理することにより、系外惑星の大気成分、銀河における星の形成などの解析などを試みる。

また、ダークエネルギーの研究によりノーベル賞を受賞した米国のソール・パールムッター氏は、「ラズリで超新星を精密に観測すれば、ダークエネルギーの変化が明らかになるだろう」と述べている。超新星(Ia型)の爆発時の光度は一定とされるが、その誤差を精密に観測することで、宇宙膨張の加速度を厳密に測定し、宇宙を押し広げるダークエネルギーの変化も判明すると氏は考える。パールムッター氏は、このラズリ宇宙望遠鏡の初期コンセプトの提案者でもある。

ハッブル退役は2033年?

ラズリ宇宙望遠鏡が発表されたAASのミーティングでは、米国のSTScI(宇宙望遠鏡科学研究所)によってハッブル宇宙望遠鏡の現状報告も行われた。それによるとハッブルが大気圏に再突入する予想中央値は2033年と予想され、2029年までの再突入確率は10%未満とされる。

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スペースシャトル(アトランティス号)によるハッブルのメンテナンス作業。2009年5月に行われたSTS-125が最後のミッションとなった (c)NASA
スペースシャトル(アトランティス号)によるハッブルのメンテナンス作業。2009年5月に行われたSTS-125が最後のミッションとなった (c)NASA

ハッブルは過去に幾度もトラブルを起こしており、スペースシャトルによる修理ミッションは5回におよぶ。しかし、2011年にシャトルが退役してからは直接的な修繕は不可能となり、ソフトウェアの更新などで凌いでいるが、その機能は徐々に限定されつつある。機体姿勢を制御するためのジャイロは予備を含めて6基だが、現在稼働しているのは2基のみ。設計寿命15年を大幅に超え、今年4月には36年目を迎えるハッブルは、すでに満身創痍な状態にある。

ハッブルは運用開始時には高度610kmの軌道に投入されたが、その領域にわずかに残存する大気の抵抗を受け、軌道高度が徐々に下がる。ハッブルのスラスターは姿勢制御であり、軌道上昇には適さず、かつてはシャトルによって引き上げられたが、もはやそれもできない。ハッブルの近地点は現在479kmまで下がっている。

こうした状況を受けてNASAとスペースXは2022年9月、ハッブルのリブースト(軌道上昇)の可能性を調査する無償協定を締結した。その結果、NASAは2024年6月、「現時点ではリブーストを追求しない」と発表した。これはリブーストで発生し得るトラブルを考慮した判断だが、同ミッションは将来的なオプションとして保留されることになった。つまり現時点においてハッブルのリブーストの予定はない。

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編集=安井克至

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