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2026.01.21 14:15

『やめて! これは私の体よ!』スウェーデン式いじめ対策は保育園から。警察の力も

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親権停止を含む迅速な介入

スウェーデンでは、子どもの安全が脅かされる場合、不適切な親から親権を取り上げることにためらいがありません。日本の制度と比べ、子ども中心の迅速な介入が特徴で、社会福祉当局が子どもを家庭から避難させることがあります。保育園で子どもが「親に殴られた」とふざけて話したため、警察が親に事情聴取をするという事例も発生することもあります。

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「教え込む」のではなく「選択肢を与える」

スウェーデンの教育では、子どもに恐怖を植え付けるのではなく、「『嫌だと言ってよい』『その場から離れてよい』『助けを求めてよい』」という選択肢を示します。これにより子どもは沈黙せず、自分の経験を言葉にできる社会文化が育まれています。

しかしながら、スウェーデンでは、移民の増加や社会融合における問題により、移民グループにおける暴力に対する閾値が社会の主流と一致しない場合があります。若い世代の一部がギャング化し、学校外での暴力や犯罪に巻き込まれる事例もあり、制度だけでは解決できない問題が残されています。

結論:社会全体で子どもを守る姿勢の重要性

日本とスウェーデンの比較から見えてくるのは、どちらの国にも暴力の問題が存在する現実です。違いがあるとすれば、それは「暴力が起きたとき、誰を中心に据えて対応するのか」という社会の姿勢かもしれません。

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スウェーデンでは学校、警察、社会福祉が役割を分担し、子どもの安全を最優先する枠組みが築かれています。日本では学校が多くを抱え込み、結果として被害者が孤立するケースもあります。

さらに、スウェーデンの例が示す重要なポイントの一つは、暴力を「起きてから対処する問題」としてではなく、幼少期から「暴力は許されないものだ」と子どもに教育することの重要性です。幼児期から「嫌だと言える」「助けを求められる」という選択肢を子どもに与える教育は、単に被害を防ぐだけでなく、子ども自身が自己防衛の力を持ち、社会全体で早期に問題を発見し対処できる文化の土台となります。

制度を単純に比較するのではなく、暴力を早期に認識し、被害者の尊厳と安全を中心に据え、社会全体で支える姿勢を、幼少期の教育も含めて育むことが今後ますます重要であると言えるでしょう。

参考文献・資料
・Skollagen (2010:800)
・BRIS(Barnens Rätt i Samhället)公式資料
・UNICEF, School violence and bullying
・文部科学省「いじめ・問題行動調査」
・日本における体罰禁止法制(2021年改正)
・スウェーデン犯罪防止評議会(Brå)報告書
・United Nations, World Report on Violence Against Children, 2014.

宮川絢子(みやかわ・あやこ)◎スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務。平成元年慶應義塾大学医学部卒業。スウェーデン泌尿器外科専門医、医学博士、カロリンスカ大学およびケンブリッジ大学でポスドク。2007年スウェーデン移住。スウェーデン人の夫との間に男女の双子がいる。

文=宮川絢子 編集=石井節子

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