経営・戦略

2026.01.18 15:00

年商95億円の「ポッドキャスト帝国」を築いた、62歳の米スポーツ司会者

コリン・カウハード(Photo by Jerod Harris/Getty Images for The Volume )

コリン・カウハード(Photo by Jerod Harris/Getty Images for The Volume )

米国のスポーツ産業において、試合中継と並んで巨大な市場を持つのが「スポーツ・トーク・ラジオ」というジャンルだ。FOXスポーツの番組で知られる著名パーソナリティ、コリン・カウハード(62)はその頂点に君臨し、過激な持論で賛否を巻き起こすスタイルで年俸25億円を稼ぐ。しかしこのベテラン司会者が現在注目を集めている理由は、マイクパフォーマンスではなく、その卓越した経営手腕にある。

カウハードは外部資本を一切入れず、自己資金のみでメディア企業「ザ・ボリューム」を設立し、数年で年商95億円規模のポッドキャスト・ネットワークに育て上げた。大手メディアの再編やプラットフォームの変動が続く中、一個人が巨大な「メディア帝国」を構築した手法は、クリエイターエコノミーの到達点ともいえる。本稿では、彼が描く勝算と、激変する米国音声メディアビジネスの最前線に迫る。

看板司会者の仕事を終えた午後は、自身がオーナーを務める企業「ザ・ボリューム」の経営に専念

米国では、コリン・カウハードは屈指の知名度を持つスポーツ司会者として知られている。しかしスポーツ司会者としての仕事は、平日午後3時にFOXスポーツのネットワークなどで放送されている「ザ・ハード」が終わると同時に、いったん区切りを迎える。その直後に彼は、今ではこちらの方が楽しいと感じていると語る、自身が立ち上げたメディア企業の運営に取りかかる。カウハードは、午前中はFOXにとっての看板司会者だが、午後には自ら設立した「ザ・ボリューム」の経営に専念している。「これはNFLでいえばゼネラルマネジャーの仕事だ。しかも自分がオーナーでもある」。

年俸約25億円を元手に自己資金で創業し、全番組の黒字化を達成

カウハードは、FOXスポーツとラジオ番組を手がけるiHeart Media傘下のPremiere Networksから、合計で年間約1600万ドル(約25億円。1ドル=158円換算)というNFLのスター選手並みの報酬を得ている。そのため彼は、自社から給与を受け取らず、外部からの出資も一切受けずに会社を成長させようとしている。独立系のコンテンツ制作会社が注目を集める中で、2020年にはスポティファイがビル・シモンズのザ・リンガーを約2億5000万ドル(約395億円)で買収し、2025年にはiHeartがポッドキャスト界のスターであるシャルラマーニュ・ザ・ゴッドに2億ドル(約316億円)を投じてBlack Effect networkの立ち上げを支援した。こうした流れを踏まえると、カウハードの事業は将来的にはるかに巨大なビジネスになる可能性がある。

カウハードは、2021年に立ち上げたポッドキャストのネットワーク「ザ・ボリューム」を従業員60人規模、25の番組を擁する規模に成長させてきた。番組の出演者には、元NFL選手のリチャード・シャーマン、元NBA選手のジェフ・ティーグ、ラッパーのファット・ジョーやジェイダキス、そしてFOXスポーツのニック・ライトのような著名司会者が名を連ねる。同社によると、月間のポッドキャスト再生数は1500万回を超え、YouTubeの視聴回数は1億回以上に達している。

フォーブスは、このネットワークの年間売上高を約6000万ドル(約95億円)、利益を少なくとも1000万ドル(約15億8000万円)と見積もっており、これら数字を基にすれば企業価値は1億5000万ドル(約237億円)を超える可能性がある。ザ・ボリュームの番組で最大の知名度を誇るのはカウハード自身で、彼が出演する「ザ・ハード」「コリン・カウハード・ポッドキャスト」に紐づく収入は、会社全体の売上の3分の1未満という。またカウハードによると、ネットワーク内のすべての番組が黒字を確保している。

「うちは独自のやり方で人材を見極めている」と、カウハードは2025年ロサンゼルスから移り住んだシカゴの自宅からのインタビューで明かした。「何を重視すべきかは分かっているし、機能する仕組みもある。一般的なポッドキャストの成功率がどれくらいかは分からないが、うちではすべてが利益を出している。我々は大いに満足しているし、出演者側も同じだと思う」。

次ページ > 広告需要の急増に合わせて番組を増やし、強力なスポンサー収入を確保

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事