肥満などの代謝性疾患の治療薬を開発する上場企業、バイキング・セラピューティクスは、GLP-1分野の成長を追い風に事業を拡大してきた。同社はいま、最大1000億ドル(約15兆8000億円)規模に膨らむ可能性のある市場を背景に、大手製薬会社にとって有力な買収候補になっている。
2012年、ウォール街のアナリストとして約10年にわたるキャリアを積んできたブライアン・リアンは、代謝性疾患向けの治療薬を手がける中小のバイオテック企業を担当していた。そうしたなかで出会った製薬会社の幹部から、同社が最近取得した糖尿病治療薬の候補について、ライセンス供与に前向きだと聞かされた。リアンはこの話をきっかけに、ウォール街でのキャリアを捨て、自ら事業を立ち上げることにした。
現在60歳のリアンは、それまで一度も起業した経験がなかった。それでも彼はリガンド・ファーマシューティカルズを説得し、自ら立ち上げる新会社に対して5つの薬剤のライセンスを供与させるとともに、250万ドルの出資を取り付けた。
リアンが立ち上げたサンディエゴ拠点のViking Therapeutics(バイキング・セラピューティクス)は現在、時価総額40億ドル(約6340億円)の上場創薬企業に成長した。同社は脂肪肝疾患などの代謝性疾患の研究も続けているが、開発中の新薬群の中核を占めるのは、肥満治療を目的とした次世代のGLP-1薬だ。この薬は、注射剤としては現在フェーズ3試験が進行中で、錠剤についてもフェーズ2試験が行われている。
2017年にノボ・ノルディスクが糖尿病治療薬「オゼンピック」を発売して以降、GLP-1薬は全米で急速に普及した。減量薬「ウゴービー」を展開し、最近では経口薬の承認も得たノボや、「ゼップバウンド」を持つイーライ・リリーなどの製薬大手が市場を牽引するなか、こうした減量薬の市場は2030年までに売上高1000億ドル(約15兆8000億円)規模に成長すると見込まれている。
背景には、米国の成人のおよそ40%が肥満に該当するという現実がある。肥満治療薬の投与対象になり得る患者は、米国のみで1億人を超える可能性がある。さらに、心血管疾患などの関連する疾患に対する効果についても、研究が進められている。
競争が激化する市場
市場規模の大きさを考えれば、競争が過熱するのは避けられない。2025年秋には、上場する別の新興企業メトセラをめぐり、ノボ・ノルディスクとファイザーが激しい買収競争を繰り広げた。その結果、自社の肥満治療薬開発を断念していたファイザーが最終的に競り勝ち、11月にメトセラを100億ドル(約1兆5840億円)で買収した。この金額は、わずか1カ月前に提示した49億ドル(約7760億円)を大きく上回るものだった。



