バイキング・セラピューティクスは、大手がひしめく肥満治療薬市場に挑む、新世代のバイオテック企業の1社だ。フォーブスが昨年取り上げた別の肥満治療薬企業Kailera(カイレラ)は、中国から治療薬候補を導入し、後期臨床試験を進めるために最近6億ドル(約950億円)を調達した。PitchBookの調査によれば、この分野では現在、60社が計120の治療薬を開発中だ。
バイキングはまだ市販薬を持たず、売上も上げていない。ただ、これまでに公表された肥満患者を対象とした臨床試験結果で同社の注射剤は最大14.7%、経口薬は最大8.3%の体重減少が確認された。とりわけ経口薬は、注射に比べて患者の心理的な負担が小さく、製造や流通のコストも抑えやすい点で注目されている。もっとも、創薬初期にある同社の収支は依然として赤字で、直近12カ月(昨年9月30日まで)の損失は2億3700万ドル(約375億2000万円)にのぼった。
こうした立ち位置にある企業は、大手製薬会社の次の買収ターゲットになりやすい。投資銀行ウィリアム・ブレアのアナリスト、アンディ・シェイは、「買収は確かに魅力的で、投資家が期待するのも無理はない。ただ、バイキングについては、外部に売却せずに自力で成長していくシナリオも、以前より現実味を帯びてきている」と話す。
メトセラの大型買収は、肥満治療薬分野でのM&Aの余地の大きさを示した一方で、なぜノボ・ノルディスクやファイザーがバイキングではなくメトセラを選んだのか、という疑問を引き起こした。空売り投資家が同社株を標的にする局面もあったが、シタデルやツー・シグマといった大手ヘッジファンドは投資を続けている。その結果、バイキングの株価の値動きは激しい。直近では1株35ドル前後で、過去1年間では17%下落しているものの、8月以降ではおよそ50%上昇している。これは、強い減量効果が示された一方で、消化管系の副作用が確認された臨床結果を受け、投資家の評価が大きく揺れ動いたためだ。試験では、薬を投与された被験者の58%が吐き気を訴え(プラセボ群は48%)、26%が嘔吐を報告した(同10%)。さらに、薬を投与された被験者の20%が途中で服用を中止しており、プラセボ群の13%を上回っていた。
オッペンハイマーのアナリスト、ジェイ・オルソンは、バイキング・セラピューティクスの開発パイプラインはメトセラよりも進んでいると指摘し、同社株の投資判断を「買い」とした。目標株価は100ドルで、現在の株価水準のおよそ3倍にあたる。
オルソンは、バイキングの肥満治療薬について、「既存薬の単なる後追いではない」と評価する。「類似した効果を持ちながら、使い勝手の面で改良が加えられている。競争が激しく、市場構造が大きく変わりつつある分野でも、十分に競争力を持つ薬だ。臨床データを見る限り、実用化に向けた現実的な道筋が描けており、実際に患者に使われる薬になる」と語った。
一方、バイキングを率いるリアンは、市場の雑音に過度に振り回されないよう意識していると語り、同社を独立した企業として維持できると述べている。「物事が本当にうまくいっているときほど、状況は一気に悪化し得るということを意識しておく必要がある。同時に、うまくいっていないように見えても、決定的な失敗が起きていない限り、必要以上に落ち込むべきではない」


