アップルは、MacBookを、製品群全体に通底する「妥協なき性能」という理想を体現する存在として位置づけてきた。ティム・クックとそのチームが2020年末にM1チップセットでApple Siliconを投入して以降、エントリーレベルのMacBook Airは同等クラスのWindows機を上回ってきた。競合がアップルを追い上げる今も、MシリーズはmacOS搭載ノートを先頭集団にとどめている。しかしアップルは、「12インチの低価格MacBook」の投入で、その魔法を破る準備をしているのかもしれない。
低価格MacBookに仕込まれた「手品」
アップルは2026年に新しいMacBookを投入すると見られている。12インチMacBookはミドルレンジのノート製品として売り出され、価格はおそらく699ドル(約11万1000円)前後になる見込みだ。これはMacにとって未知の領域だ。これまでアップルは、象徴的な999ドル(約15万8700円)の価格ラインを下回ることに消極的だった。定価を30%引き下げる以上、部材コストを成立させるために大きな妥協が必要になる。
その節約の多くは、2024年のiPhone 16 ProとiPhone 16 Pro Maxに搭載されているApple SiliconのA18 Proチップセットを採用することで生まれると見込まれている。A18 Proはスマートフォン向けに設計され、断続的な負荷に合わせて短時間の高い処理性能を発揮するよう最適化されている。これは、macOSのようなデスクトップOSが求める持続的な負荷とは性質が大きく異なる。
さらに、Thunderbolt(サンダーボルト)対応の削除、より低速なUSBポートへの制限、外部ディスプレイを1台に限定するといった妥協を重ねれば、アップルは、macOSにMシリーズとAシリーズという「二層化」(two-tier)の世界を持ち込むリスクを負う。
低価格MacBookに寄せられる期待
すると問題は、消費者の期待と、アップルがMacBookという名の周囲に築いてきた「オーラ」へと戻ってくる。ノート製品に付いたアップルのロゴは、理想的な性能と仕上げを備え「すべてがただ動く」マシンであることを約束する。A18 Proで駆動し、仕様も抑えられた低価格MacBookは、その認識にどのような影響を与えるのか。
アップルが、ほぼ10年前にWindows搭載ネットブックが示したような、非力でぎこちない体験のノート製品を出荷する可能性は低い。だが、作業フローには制約が出る。アプリは遅く動き、アプリケーションが使える余力(ヘッドルーム)は小さくなり、製品群全体での性能の開きはよりはっきりするだろう。



