経済・社会

2026.01.13 17:00

トルコ・サウジ・パキスタン協定と、従来の確実性に取って代わる「安全保障市場」

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ブルームバーグは米国時間2026年1月9日、協議に詳しい関係筋の話として、トルコが4カ月前に締結されたサウジアラビア・パキスタン相互防衛協定への参加を模索していると報じた。このタイミングは重要である。トルコ政府が動いたのは、トランプ政権がホワイトハウスに復帰してからわずか数週間後のことだった。取引重視の米国安全保障政策に対するヘッジ(リスク分散策)が、理論上の話から実行段階へと移行した時期だ。

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だが、これを「トルコがNATOから離反しつつある」という物語として読めば、肝心のシグナルを見落とすことになる。

本当の物語は、中東において安全保障が今どのように売買されているかという点にある。単一の傘の下に一括で収まるのではなく、重層的なポートフォリオとして組み上げられている。条項ごとに。回廊ごとに。そして商業的な論理が静かに織り込まれている。

なぜなら2026年においては、安全保障は条約だけで決まるものではないからだ。資金調達、共同生産、兵站、そして政治に影のように追随する調達判断によって決まるのだ。

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この動きを規定する3つの軸

トルコがこの協定に接近しているとされる動きは、3つの軸で作用しており、これが象徴的なジェスチャーにとどまるか、湾岸安全保障体制の構造的転換となるかを左右する。

軸1:政治的シグナルか、それとも運用統合か

集団防衛条項は、集団防衛能力そのものではない。NATOの第5条(加盟国への攻撃を全加盟国への攻撃とみなす集団防衛条項)が強力なのは、それを支える制度があるからである。綿密な計画、相互運用性の基準、指揮系統の統合、そして70年にわたる運用上の蓄積がそれだ。2025年9月に締結されたサウジ・パキスタン協定には、そうしたインフラがない。少なくとも現時点では。

企業のリスク管理チームにとって、この区別は決定的に重要である。条項は物語(ナラティブ)を動かす。制度は保険料率(プレミアム)を動かす。問われるのは、トルコがどちらのバージョンに参加しようとしているのか、である。

軸2:防衛産業チャネル

この協定の商業的論理は、修辞的な枠組みよりも重要である。ロイター通信は今月、サウジアラビアからパキスタンへの融資を軍事装備パッケージに転換する協議が進行中だと報じた。これがテンプレート(ひな形)となっている。安全保障協定は、調達、共同生産、防衛産業協調のための資金調達手段としての機能を強めているのだ。

トルコがこの枠組みに参加すれば、最初の明確なシグナルは派手な安全保障の約束ではないだろう。それは静かで測定可能なものになる。共同生産の発表、演習スケジュール、輸出信用の枠組み、港湾や兵站施設へのアクセス取り決めなどである。これらの構成要素は、運用上の実務としては十分に意味を持ち、曖昧さゆえに否認可能であり、商業性ゆえに軍服を着ない利害関係者をも引きつける。

軸3:抑止の「認識」か、抑止の「現実」か

パキスタンには、他国が容易に提供できないものがある。強固な軍事力を備えているという「認識」だ。条約文に「核」への言及がなくとも、その含意は地域の人々の意識にしっかりと刻まれている。サウジアラビアはその「認識プレミアム」を購入しているのだ。問題は、トルコの参加がそれを増幅させるのか、それとも希薄化させるのかだ。

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翻訳=酒匂寛

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