トランプは1期目終盤の2020年1月、イラクの首都バグダッドでイラン革命防衛隊(IRGC)の精鋭部隊「クッズ部隊」のソレイマニ司令官をドローン攻撃により暗殺した。イランは数日後に報復として、米軍が駐留するイラク空軍基地へ弾道ミサイルの集中攻撃を行い、米兵数人が外傷性脳損傷を負った。この被害に対してトランプは当時報復せず、その後もイランの反撃で米軍関係者が深刻なけがをしたとは認めていない。
ハメネイ師や、罪のないデモ参加者を殺害している革命防衛隊の指導部に対してトランプがどのような対応を取るかを近く決断するにあたって、ソレイマニ暗殺が有益な先例となるかは不明だ。
1979年のイラン革命で倒れたパフラヴィー王朝最後の皇太子で米国に亡命中のレザー・パフラヴィーは、イランで抗議を続けるデモ隊に向けて、粘り強く抵抗しハメネイ政権を打倒するよう呼びかけている。10日にX(旧ツイッター)に投稿した動画メッセージでは「われわれの目標はもはや、ただ街頭に繰り出すことではない。都市の中心部を掌握・維持する準備を整えることだ」と明確に宣言した。
トランプは今のところパフラヴィーとの面会を拒否している。民間人の殺害をめぐってイラン指導部を処罰すると公言したトランプの決意が、デモ参加者を守るために長期的な作戦を遂行する意思を示すものかどうかは疑問だ。
ミッドナイト・ハンマー作戦のような1回限りの空爆や、複数回にわたる空爆だけでは、デモ隊に勝利をもたらすほどの効果はないかもしれない。さらに、もし米国がハメネイ師を暗殺したとしても、正規軍よりはるかに重武装の革命防衛隊は強力な勢力を保っており、暴力にものを言わせた無慈悲な大量殺戮を行ってイランを支配し続ける可能性は残る。実際、6月の戦争でイスラエルの先制攻撃がイラン軍の上級指揮官の多くを排除した後も、イラン政府に屈する様子はなかった。
パフラヴィーの呼びかけに応じてデモ隊が都市中心部を掌握できたとしても──もっともこれには実行性に大きな疑問符が付く──、革命防衛隊の圧倒的な火力からデモ隊を保護する必要があるのは間違いない。そこで米国が空爆支援を行い、デモ隊が占拠した都市中心部の周辺に飛行・通行禁止区域を設けて厳格に運用すれば、デモ隊にも戦うチャンスが生まれると考えられる。
ただ、トランプがこれまで示してきた姿勢を見る限り、このような終わりの見えない、しかも多大なコストを伴うであろう作戦に踏み切る可能性は低いと思われる。とはいえ、現段階ではあらゆる可能性を排除しないことが賢明だろう。


