アート

2026.01.19 15:30

美術館で出会う「ストリートカルチャー」の再定義|アートな数字

金沢21世紀美術館アシスタント・キュレーター 髙木遊

金沢21世紀美術館アシスタント・キュレーター 髙木遊

展覧会、芸術祭、フェア、オークションなど多彩な話題が飛び交うアートの世界。この連載では、毎月「数字」を切り口に知られざるアートな話をお届けしていく。今回は金沢から。能登半島地震を契機とした展覧会が、新たな視点を与えてくれる。


今月の数字|今年21周年を迎えた金沢21世紀美術館は、能登半島地震で展示室のガラス天井が落下するなどの被害を受けた。幸い休館日で人災はなかったものの、キュレーターの高木にとって、美術館のあり方を問うきっかけとなった。本展では、危機に対してアートが何をできるのかを提示している。
今月の数字|今年21周年を迎えた金沢21世紀美術館は、能登半島地震で展示室のガラス天井が落下するなどの被害を受けた。幸い休館日で人災はなかったものの、キュレーターの髙木にとって、美術館のあり方を問うきっかけとなった。本展では、危機に対してアートが何をできるのかを提示している。

展覧会が始まって間もない2025年10月末、平日にもかかわらず、金沢21世紀美術館は多くの人で賑わっていた。「いつもより少ないぐらいですね」と同館キュレーターの髙木遊は周囲を見渡す。

国内有数の入館者数を誇る同館は、市の観光における稼ぎ頭だ。それもあって、展覧会「SIDE CORE Living road, Living space/生きている道、生きるための場所」で、通常有料のスペースを一部無料にするのはなかなかの挑戦で、「市長の承認が必要でした」と髙木は振り返る。

SIDE COREは、東京を拠点に日本各地で活動するアートチーム。東日本大震災を機に、地域に依存する都市の存在に気づいた彼らは、ストリートカルチャーを「異なる場所や文化をつなぐ媒介」として再定義し、表現を続けてきた。複雑化、多様化するアートシーンにおいて“コレクティブ”の重要性に着目する髙木は、以前から関係を築いており、能登半島地震の発災時、「最初に連絡をくれたアーティストだった」彼らと企画をあたためてきた。

美術館の東西を貫く「道」となった無料エリアでは、SIDE COREが招聘したゲストアーティスト2組の作品を展示する。ひとつは、SIDE COREの原点ともいえるグラフィティライター、スティーブン・ESPO・パワーズによる壁画。市民の利用が多い入り口側では、カラフルな260文字のアルファベットを組み替えながら、メッセージを発信していくという。

もうひとつは、プロスケーターで映像作家の森田貴宏によるスケートパークだ。円形の展示室を丸ごとパーク化し、閉館前の1時間はスケーターに開放。「雨や雪の多い金沢で屋内のパークは貴重だとありがたがれ、すでにコミュニティができ始めています」という。

次ページ > 危機に対してアートに何ができるかを示すひとつの事例

文=鈴木奈央 写真=山田大輔 書=根本充康

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