さらに前例がないこととして、展覧会場内に作品を購入できるギャラリーを設置。SIDE COREと活動してきた細野晃太朗が手がける、「アートと生活を近づける」試みだという。会期中に何度か入れ替えるが、取材時には、個展では即完する山口幸士の作品などが販売されていた。
なかでも髙木が特に気に入っているのが、光庭に組まれたやぐらに登り、屋上に設置されたスクリーンで見るSIDE COREの「new land」だ。能登半島地震後、海岸隆起によって生まれた新しい土地。その様子をありありと伝える映像は「危機に対してアートに何ができるかを示すひとつの事例」だと語る。
ガラス張りの円形建築で、街に開かれた存在として知られる金沢21世紀美術館だが、20年もたてば、運営や発想も凝り固まる。そんななか、無料化したり、やぐらを立てたりと、そのあり方を問う展覧会は、美術館という空間に新たな道を切り開いているように映る。
「できっこないと思い込みでいることも、丁寧なコミュニケーションで乗り越えられるということを今回SIDE COREから学びました。自分たちで即時的にフォーマットをつくっていく。時代にあわせて美術館自体も変わっていかなければならないと思います」
髙木遊◎1994年生まれ。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了、ラリュス賞受賞。The 5th Floor共同創設者および金沢21世紀美術館アシスタント・キュレーター。枠にとらわれない実践を通して、共感の場としての展覧会のあり方を模索する。


