「最も高い地球周回軌道」も更新
半世紀ぶりに人類が月を訪れるアルテミス2では、もうひとつ重大なイベントが行われる。それは有人フライトとしては、過去最高高度の地球周回軌道を航行することだ。
オリオン宇宙船は打ち上げ後、まずは地球周回軌道に入る。それは地表から最も近いポイント(近地点)が185km、遠いポイント(遠地点)が7万4030kmという長楕円軌道(離心率0.916)であり、23.5時間かけて地球を一周する。
有人フライトにおける過去の最高高度は、現NASA長官であるアイザックマン氏がポラリスドーン計画(2024年9月)で打ち立てた196km×1401kmだが、アルテミス2はこの遠地点を約53倍上回る。これは月までの平均距離(38万4400km)の約20%に相当する高度だ。この軌道上でSLSの第2段(ICPS)を切り離すとオリオンは手動操縦に切り替えられ、ICPSをターゲットに見立ててドッキングテストが行われる。これはジェミニ計画や初期のアポロ計画で行われた実証テストを彷彿とさせるものだ。
アルテミス2ではドッキングは行わないが、アルテミス3以降では月着陸機とのドッキングが必須であり、これはその予行演習となる。月へ向かう軌道上ではなく、地球周回軌道上でこのテストが行われるのは、何かしらの問題が発生した場合に短時間でクルーを地球に帰還させるためだ。
無人機5機が月面着陸に挑む
2026年にはその他5機の無人月輸送機が月面着陸を目指す。そのうちの4機はNASAの月輸送事業CLPSの支援を受けた米民間企業によるもので、もう1機は中国国家航天局(CNSA)による。
ブルームーンMk-1
ジェフ・ベゾス率いるブルーオリジンの無人月面輸送機「ブルームーンMK1」は、FCC(米連邦通信委員会)に提出された申請書類によると、2月2日以降の打ち上げが予定されている。しかし、搭載エンジン「BE-7」の噴射試験が第2四半期に予定されているという情報もあり、これが事実であれば打ち上げは2026年後半になるだろう。同社にとってはこれが初の月面着陸であり、月南極域にあるシャクルトンクレーターへの着陸を目指す。
ブルームーンMK1は他社の月面輸送機よりもひとまわり大きく、その機体質量(燃料含)は21.4トン。最大3トンのペイロード(荷物)を月面に輸送する能力を持つが、今回のミッションではNASAの観測機器(100kg未満)を610万ドル(9億5800万円)で運ぶ。


