サイエンス

2026.01.15 18:00

「世界最大の動物」シロナガスクジラは、今も生物として可能な巨大サイズに向け進化し続けている

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データで見る「クジラの巨大化」

研究チームは、暦上の年月(実時間)ではなく、世代交代の期間を単位として、進化の速度を算出した。このアプローチの長所は、「大型の動物ほど、世代交代の間隔が長くなる」という影響を排除し、条件をそろえて比較できるところにある。このアプローチを用いた結果、いくつかの興味深い統計データが明らかになった。

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・クジラは、およそ500万世代(3000万年)をかけて、約25kgから190トンまで大型化した

・海洋哺乳類は、陸生哺乳類と比べて、2倍の速さで体のサイズを大きくできる

・クジラが質量を5000倍まで増加させたスピードは、研究で用いたデータセットに含まれているどの哺乳類グループよりも速かった

・孤立した島で動物が矮小化する現象など、動物が小型化するスピードは、大型化するよりも10倍速い

しかし、最も予期されていなかった発見の1つはおそらく、水生哺乳類の最大サイズは、進化の長い道のりにおいて、ほぼ一定のペースで大きくなってきたことだ。つまり、クジラ目(イルカやネズミイルカ、クジラ)は、その起源から現在に至るマクロ進化において着実に変化してきた最も明確な事例の1つなのだ。

シロナガスクジラが現在も大型化を続けている理由

最終氷期が終わったあと、大半の哺乳類は、体の大型化が止まった。それどころか、その多くは現在、100万年前よりも小型化している。その一因は、人間が狩りによって最大の種を絶滅に追い込んだことと、温暖化した現在の気候では、大きな体を持つメリットがずっと小さくなっていることだ。

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ところが、シロナガスクジラはこの原則を完全に破っているようで、今もなお、生物学的に可能な最大サイズに向けて成長し続けている。前述したABCサイエンスのインタビューでは、こう説明されている。「シロナガスクジラの最大サイズは、私たちの生存中にピークに達するかもしれない」。

そう考えられるのはおそらく、南極周辺の海流が変化してオキアミ供給量が増え、食料源が稀に見るほど豊かになり、巨体を維持できるようになったからだろう。とはいえ、こうした傾向が永遠に続くとは限らないと、研究チームは釘を刺す。乱獲と気候変動の影響で、オキアミの個体数が変われば、クジラの成長が妨げられる可能性がある。

シロナガスクジラは、世界最大の動物であるだけではない。哺乳類の記録史上、最も速く、最も劇的に体が大きく進化した動物でもある。海によって、力学的に大型化が可能になった。食料源と体温調節機能によって、生物学的に優位に立った。そして、オキアミの供給量が十分にある限り、シロナガスクジラは進化によって、動物として可能な最大の大きさに向けて成長し続けていくことだろう。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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