4. 水力発電の推進に伴う問題
輸出収入が減少し、国内の電力需要が増す中、戦略的な代替手段として水力発電が再び脚光を浴びている。主要地域の電力不足により、政府は大規模な水力発電所の建設計画を推進している。この手法はソビエト時代の社会基盤整備計画をほうふつとさせる。複数の制約に同時に対処するために設計された、辺境地域の大規模プロジェクトだ。
ロシア水力発電公社ルスギドロの29年までの投資計画は総額1兆1300億ルーブル(約2兆5900億円)に上り、その約80%が、極東、北カフカス、北極圏、シベリアといった辺境地域のプロジェクトに充てられる。プーチン大統領は自らこの取り組みを監督している。だが、大規模水力発電プロジェクトは、財政的制約の中で長期の建設期間と多額の先行投資を必要とする。環境破壊などの社会的な代償も伴う。既存の発電所の近代化は効率向上につながる可能性があるが、新規建設による効果は短期的な緩和にとどまる。水力発電は政府の投資負担を増大させる一方で、差し迫った電力不足を緩和する効果は限定的となるだろう。
5. スマートシティーの発展を妨げる電力不足
辺境地域とは異なり、首都モスクワは自らをロシアのスマートシティーの先駆けとして位置付けている。スムーズな接続性や非現金決済、監視システム、人工知能(AI)を活用した公共サービスは、技術的近代性のイメージを投影している。この構想は、検索、クラウドサービス、フィンテック、企業向けAIを支配するロシアIT最大手のヤンデクスや銀行最大手のズベルバンクといった企業に支えられている。
他方で、先端技術の外観は今、限界に達している。金利の上昇やIT人材の国外流出、先進チップの輸入制限などが制約をかけているのだ。26年にはより根本的で長期的な制約が加わるだろう。それは電力不足だ。ロシアの商用データセンターの80%以上が、モスクワとサンクトペテルブルの2大都市圏に集中している。この2大都市圏は特に電力網の余裕がなく、拡張が進んでいない地域だ。データセンターの電力消費量は30年までに現在の2.5倍に膨らむとの試算もあり、需要は既に急速に高まっている。ヤンデクスの幹部は、AI訓練用の電力が不足していることに加え、送電網接続の確保に最大1年の遅れが生じていることを公に認めた。2大都市圏における電力不足が、ロシア全土で技術的・経済的発展を妨げることになるだろう。


