売却益はベネズエラに渡らず、債権者への弁済に充てられる
もう1つの注目点は、今回の59億ドル(約9263億円)が、ベネズエラ政府や国営石油会社PDVSAには一切渡らないことだ。資金はすべて、これら資産を担保にした債券を保有していた、十数社の企業や投資家への支払いに充てられる。支払い対象には、約14億ドル(約2198億円)を受け取る見通しのコノコフィリップスのほか、バンクーバー上場の鉱山会社ルソロ(現金4億ドル[約628億円]と転換社債6億5000万ドル[約1021億円]を受け取る予定)が含まれる。コネチカット州グリニッジを拠点とするヘッジファンド、コントラリアン・キャピタル・マネジメントの関連会社であるレッド・ツリー・インベストメンツも、少なくとも3億3000万ドル(約518億円)を受け取る見込みだ。
大きな受益者となるのが、テナー・キャピタル・マネジメントだ。同社は、ニューヨークを拠点とする運用資産が90億ドル(約1.4兆円)のヘッジファンドである。チャベス政権による鉱山国有化を巡って生じた、クリスタレックスの損害賠償請求権を保有しており、アンバーが支払うシトゴの売却代金から、その弁済に充てられる10億ドル(約1570億円)超の資金の大半を受け取る見通しだ。
担保付き国債を事前に買い取り、競合との賭けに勝つ
特別管財人と裁判所が最終的にエリオットとアンバーの側に立ったのは、両者が、2016年にベネズエラが発行した国債「PDVSA2020債」を購入した別の債権者グループとの調整を、すでに進めていたためだった。
この国債はシトゴ株の50.1%を担保としており、これら債券の保有者は、ゴールド・リザーブのような他の債権者と利害が衝突する立場にあった。審理の過程で、アンバーは、PDVSA2020債の75%超を保有する債権者グループと合意し、21億ドル(約3300億円)で債券を買い取ったうえで、関連する債権関係を整理する取り決めをまとめた。
これに対し、競合入札者だったゴールド・リザーブは、こうした債券保有者との交渉を行わなかった。PDVSA2020債の有効性は、ニューヨーク南部地区連邦地裁で係争中の別の訴訟で争われていた。ゴールド・リザーブは、この債券が無効と判断される可能性に賭けていた。仮に無効と判断されれば、債券保有者はシトゴの競売代金から支払いを受けられず、その分の資金は他の請求者に回るはずだった。
しかし、米連邦地裁のキャサリン・フェイラ判事は昨年9月、この訴訟でPDVSA2020債は有効であるとの判断を下した。スターク判事は意見書の中で、「本質的に、ゴールド・リザーブとアンバーは、どちらか一方しか報われない判断の正反対の立場に立っていた」と指摘した。そのうえで、「結果として報われたのはアンバーで、ゴールド・リザーブではなかった」と記している。


