北米

2026.01.10 17:30

ベネズエラから巨額の利益を得る、「トランプ支持者」とエネルギー業界の大物

(Lucas Parker/Shutterstock.com)

エネルギー業界の実力者と連携、過去に数兆円規模の売却も成功

アンバーはシトゴの買収を目指して2024年8月に設立され、その動きにはエネルギー業界の幹部や大物も深く関わっている。アンバーの社長ジェフ・スティーブンスは、ビリオネアのポール・フォスターともに1997年に米製油会社ウエスタン・リファイニングを共同創業した。ウェスタン・リファイニングはテキサス州エルパソの1つの工場からスタートしたという。スティーブンスとフォスターは2017年、同社を60億ドル(約9420億円)で同業のアンデバーに売却している。

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当時そのアンデバーの経営を率いた人物が、現在アンバーの最高経営責任者(CEO)を務めるグレッグ・ゴフ(64)だ。スティーブンス、フォスター、ゴフの3人は2019年、アンデバーを360億ドル(約5.7兆円)でマラソン・ペトロリアムに売却した。

ゴフとスティーブンスは、マラソン・ペトロリアムの株主となった後、同社に対するアクティビスト(物言う株主)としての投資活動を通じて、エリオットのエネルギー部門責任者ジョン・パイクと関係を深めた。 ゴフとスティーブンス、エリオットは2019年、共闘する形でマラソンのゲーリー・ヘミンジャーCEOを退任に追い込むことに成功し、経営トップ交代を後押しした。2020年には、マラソン子会社にあたる、当時約4000カ所の給油所を展開していたスピードウェイを、セブン-イレブンの日本の親会社セブン&アイ・ホールディングスに210億ドル(約3.3兆円)で売却する計画を支援した。なおエリオットは現在、石油製品大手フィリップス66の株27億ドル(約4239億円)相当を保有し、同社に対して数年間にわたり圧力をかける形で資産売却を求め続けている。

約3140億円低い提示額で落札、司法判断が分けた明暗

アンバーによるシトゴの落札は、トランプ政権の今回の動きよりもはるか以前から、物議を醸してきた。デラウェア州の連邦地裁判事レナード・スタークは、10年に及ぶ訴訟と数カ月にわたる証言、長期化した競売手続きを踏まえたうえで、アンバーの落札を認めた。スターク判事は、判断に至った経緯と理由を168ページにわたる意見書で詳細に説明している。アンバーの入札額は、少なくとも1つの競合案より20億ドル(約3140億円)低かったが、裁判所はそれでも同社の案を採用した。

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シトゴを巡る最大の競合相手は、カナダの小規模な鉱山会社ゴールド・リザーブが率いるコンソーシアムだった。同社は、2011年に当時のベネズエラ大統領ウゴ・チャベスによって鉱山資産を接収された企業で、当初は同じ債権者であるコーク・インダストリーズの支援も受けていた。

ゴールド・リザーブ副会長を務めるポール・リベットは、約80億ドル(約1.3兆円)もの金額を提示しながら落札できなかったことに、現在も強い不満を示している。リベットは「なぜシトゴは、より低い金額を提示した入札者に渡るのか。自分たちはJPモルガンからの資金調達も確保していた。それでも負けたのは理解できない」と語った。

スターク判事は、アンバーの入札を承認した意見書の中で、競売手続きを監督していた特別管財人(裁判所の代理人)が、ゴールド・リザーブよりもアンバーの方が取引を確実に完了できる可能性が高いと判断し、アンバー案を推薦した点を重視したと説明している。これに対しゴールド・リザーブは、スターク判事の命令を覆すため、間もなく米第3巡回控訴裁判所に控訴するとしている。同社は、シトゴの競売手続きが公正さを欠いていたと主張する。

ゴールド・リザーブによると、裁判所が任命した特別管財人の主要アドバイザーを務めていた法律事務所ワイル・ゴットシャル&マンジズと、投資銀行系アドバイザリー会社エバーコアは、別の案件でエリオットからも報酬を受け取っていた。こうした関係が、判断に影響を与えた可能性があるというのが同社の主張だ。ただし、デラウェア州の地裁は以前の意見書で、これら問題提起について「手続き上の不備がある」「すでに放棄された論点に基づくものだ」と指摘し、正当性を認めていない。

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翻訳=上田裕資

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