米軍によるベネズエラ大統領の拘束劇が招いた混乱が、巨額の利益に変わろうとしている。主役は、トランプ大統領の有力支援者であり、ヘッジファンド大手エリオット・マネジメントを率いるポール・シンガー(81)だ。エリオットが支援する米新興企業アンバー・エナジーは、ベネズエラ政府が事実上保有してきた米国内の石油精製会社「シトゴ(CITGO)」を、競売を通じ市場価値の半値近い金額で手中に収めた。売却代金はベネズエラ政府や国営石油会社PDVSAに渡らない。資産差し押さえを求めてきた企業や投資家への弁済に充てられる。
長年の制裁と失政で債務不履行に陥った国家の優良資産を、法的手段を駆使して安値で買い叩く。この「先見の明」ある取引には、シンガーだけでなく、ゴールドマン・サックス出身者やエネルギー業界の重鎮も一枚噛んでいる。政権の強硬策と呼応するかのように進む、したたかな富の分配劇。その内幕と、巨利を手にするトランプ支持者たちの正体に迫る。
トランプ支援者とウォール街の投資家、石油精製会社シトゴ買収に集結
現地時間1月3日未明、米軍がベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した。この動きで最も利益を得る人物として、ヘッジファンド大手エリオット・マネジメントを率いるポール・シンガーの名が取り沙汰された。
シンガーは、経営難に陥った企業や資産への投資で実績を積み重ねてきた投資家だ。エリオットが支援する米新興企業アンバー・エナジーは、米連邦裁判所の競売で、ベネズエラの国営石油会社が間接的に所有してきたシトゴを59億ドル(約9263億円。1ドル=157円換算)で落札していた。米国内に3つの製油所を持ち、全米で約4000カ所の給油所網を展開するシトゴの落札額は、かなりの割安だったと受け止められた。
オークツリーやアポロも参加、買収資金を支える有力グループ
トランプ大統領の支援者であるシンガーは、最大の受益者になるとみられているが、シトゴの買収を進めるエリオット陣営には、複数の有力投資家が名を連ねている。エリオットは買収資金の一部として株式の3分の1を拠出し、ウォール街の投資家を集めた陣営を取りまとめた。参加した投資家には、ハワード・マークスとブルース・カーシュが率いるオークツリー・キャピタル・マネジメントが含まれている。ヘッジファンドのシルバーポイント・キャピタルも参加している。シルバーポイントは、ゴールドマン・サックスで債券部門の要職を務めたエド・ムレとロバート・オシェアが設立した投資会社で、運用資産430億ドル(約6.8兆円)に上る。
買収に向けてのデットファイナンス(借入による資金調達)では、トランプ支持者として知られるビリオネア、マーク・ローワン(純資産83億ドル[約1.3兆円])が率いるアポロ・グローバル・マネジメントが中心的な役割を担った。事情に詳しい2人の人物は、ローワンは一時、財務長官の候補としても名前が挙がっていた人物だと明かした。裁判所資料によると、アンバーが38億ドル(約5966億円)の第1順位債務(シニア債)を引き受け、28億5000万ドル(約4475億円)の転換社債を発行することが含まれる。また、エリオットの関連会社による2500万ドル(約39億円)の株式投資についても言及されている。



