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2026.01.23 11:00

上へ、下へ、人が巡る“美食の塔”「D-Scape 神田鍛冶町」がつくる、大切な人との景色

神田駅南口の角地に、人の交流をコンセプトにした飲食ビルが誕生する。ダイワハウスが手がける「D-Scape 神田鍛冶町」は、階段とテラスが上下階の回遊を生む「バーティカルハイストリート」を実現した。神田という街に新しい食文化を根付かせる、その空間戦略を読み解く。


東京駅からわずか一駅。神田という街はふたつの顔を併せもつ。神田明神が鎮座し、老舗店が伝統を守り続ける「歴史ある街」。その一方で、路地裏の飲食店に息づく「庶民的なにぎわい」。この相反する魅力を併せもつ街に、新たなシンボルが誕生する。

「D-Scape 神田鍛冶町」─ダイワハウスが手がける、食を軸としたビルディングだ。目を引くのは、建物の表情を決定づけるテラスの連なり。各階から張り出すように配されたテラスは、花が茎から咲き出すかのように、リズミカルに積層する。ガラスに包まれた開放的な空間が、通りを行く人々の視線を上へと誘う。この建物は、神田の新しい景観として、街に刻まれようとしている。

「神田は、東京のなかでも特別な奥行きをもつ街です」

企画段階から同プロジェクトにかかわる、大和ハウス工業ビジネス・ソリューション本部の柏崎淳一は、こう語る。

「日本橋に面したエリアには銀行や老舗の名店が多くあります。格式も地理的な魅力もあるのに、評価が追いついていないと感じていました。だからこそ、シンボルとなりうるビルが必要だと思ったのです」

「D-Scape 神田鍛冶町」を特別な空間にしているのは、「バーティカルハイストリート」という独創的な思想だ。ビルには2つの直通階段を設置。うち1つをテラスと一体化させ、ガラス張りのオープンな空間とつなげることで、上下階の店舗間に回遊性を生み出している。多くの場合、階段は建物の内側に隠される機能だ。しかしここでは、それが建築の表情、そしてアイデンティティそのものとなっている。

D-Scapeの完成予想図。リズミカルに積層されるテラスと階段は、外観上の魅力であり、人の交流を生むツールでもある。<お問い合わせ窓口(ゼン・ランド)☎:03-5457-7825>
D-Scapeの完成予想図。リズミカルに積層されるテラスと階段は、外観上の魅力であり、人の交流を生むツールでもある。<お問い合わせ窓口(ゼン・ランド)☎:03-5457-7825>

建築を設計したキー・オペレーション代表取締役の小山光はその狙いを語る。

「通常、飲食店が集まるビルは階ごとに独立していて、お客さまがほかのフロアを見ることは少ない。D-Scapeは上の階のテラスから下の階をのぞきこんだり、階段を上りながらほかのフロアを見たりすることができるように設計しました」

各階に設えられたテラスは、単なる屋外席ではない。それぞれのフロアのテラスで語らう人の視線が交差し、空間が呼応する。江戸時代の長屋で育まれた、人と人が自然に交わる文化。それを現代の垂直建築に宿らせた、「人の交流」というコンセプトがここにはある。

建物が記憶に残る「景色」として花開く

「D-Scape」という名には、ダイワハウスが提供する景色(Scape)という意味が込められている。

「私たちがつくるのは、あくまで『器』です。けれど、そこでどんな景色が生まれるかは、訪れる方々と、店を営むみなさんが共に紡ぎ出すもの。結婚式の二次会、大切な人との記念日、久しぶりの同窓会―人生の節目に選ばれる場所でありたい。大事な誰かとどのような景色を見るか。その問いに応える空間を、ここに用意しました」(柏崎)

立地もまた、物語を再生産する重要な要素だ。新幹線で東京駅を出た直後、この建築が視界に飛び込んでくる。美しく連なるテラス、ガラスに映る光の反射、緑を擁する壁面。無機質な都市の建物群のなかで、この建築は独特の表情をもつ。

「故郷へ帰るとき、あるいは旅から戻るとき。車窓からこの空間を眺めて、『ああ、あそこで過ごした時間』と、温かな記憶がよみがえるはずです。建物そのものが、思い出の風景の一部になれたら」(柏崎)

興味深いのは、「Scape」という言葉が「花茎(かけい)」を意味することだ。

「茎から花が咲くように、ここから多彩な食体験が花開いていく。意図したわけではなく、単語の意味も偶然知りえたものですが、美しい符合だと感じています」(柏崎)

では、この空間はどのような店を迎え入れるのか。神田という街同様に、「D-Scape」も多様でありたいという。

「イタリアン、エスニック、和食。異なる文化、異なる感性の料理を味わえる店舗が並ぶことで、訪れるたびに新たな食体験の扉が開く。大切な日や自分へのご褒美として訪れたくなる、けれど肩肘張らずに楽しめる。そんな空間を演出できる店舗と、訪れてくださるお客さまに、愛されるビルとして育てていただきたい」(柏崎)

飲食に限らず、食を取り巻く世界すべてが対象だ。

「例えば、こだわりをもった調理器具を揃える専門店、作家ものの器を扱うギャラリーなど。食を豊かにする要素をもっていれば、さまざまな形態を歓迎します。それぞれが響き合い、相乗効果を生むはずだと期待しています」(柏崎)

1階でディナーを楽しみ、階段を上がって別の店のバーカウンターへ。心ゆくまで食を堪能すれば、おのずと食にまつわるモノにも目が向く。

コロナ禍を経て、食を共にする時間はより特別な意味をもつようになった。ただ集まるだけでなく、大切な人たちと向き合い、質の高い時間を共有する。そうしたトレンドに、この空間は自然に応えていく。

人々が交差してきた街で人々が交流するビルが街をにぎわす

江戸時代、武家屋敷が並ぶ一方で、商人や職人の街としても繁栄した神田。「鍛冶町」「紺屋町」といった町名が今も残るのは、鍛冶職人や染め物職人が軒を連ね、技を競い合った歴史の証だ。明治時代に馬車鉄道が開通すると、交通の要として街が一層活性化。武士・商人・職人が行き交った江戸時代のように、いつの時代もさまざまな人々が交差・交流する場として、神田は発展を遂げてきた。

その活気は「D-Scape」の目指す姿と重なる。

「テラスや階段という共用空間が、店と店、人と人をつなぐ中間領域として機能しています。それにより、店の魅力がフロア内に閉じるのではなく、染み出していく。お客さまが建物内を回遊することで、偶然の出会いや会話が生まれ、新たなカルチャーが育まれる。それがビル全体、そして神田という街全体に波及していくと考えています」(柏崎)

ビルだけでなく街そのものににぎわいをもたらす。それが「D-Scape」が目指す最終的な目標だ。

カジュアルのなかにも高級感を漂わせる。その絶妙なバランス感覚こそが、神田という街の魅力であり、このビルのコンセプトとも重なる。

「外観で重視したのは、街との調和です。歴史ある地域なので、きらびやかさではなく洗練を追求しました。これまでの神田にはない、コンセプトが色濃いビルですが、『良い異質感』として街のポテンシャルを拡張する存在になると確信しています」(柏崎)

2026年に誕生する「D-Scape 神田鍛冶町」。多様な人々が垂直に交わる場として、この街に新しい息吹をもたらす。ここで生まれる景色は、訪れる者すべての記憶に刻まれるはずだ。

大和ハウス工業
https://www.daiwahouse.co.jp/


写真左から:きし・よしとも◎大和ハウス工業東京本社 BS本部 事業統括部 流通開発事業部 運営戦略グループ 主任
ないとう・ひろゆき◎同流通開発事業部 第2グループ 課長
こやま・あきら◎キー・オペレーション代表取締役
しみず・しょうじ◎大和ハウス工業東京本社 BS本部 事業統括部 流通開発事業部 運営戦略グループ 次長
わだ・やすのり◎同流通開発事業部 事業部長
かしわざき・じゅんいち◎同部 第1グループ 次長
わたり・りく◎同流通開発事業部 運営戦略グループ
おち・みつのり◎技術統括部 エンジニアリング部 流通室 コンストラクション・マネジメントグループ 担当部長
おがわ・まさき◎事業統括部 流通開発事業部 運営戦略グループ グループ長

Promoted by 大和ハウス工業 | text by Kaori Saeki | photograph by Yoshinobu Bito