次なる成長に向け、サイバーセキュリティ企業CrowdStrikeの創業者兼CEOを陣営に
その取り組みの一環として、ヴォルフは2025年11月のラスベガス・グランプリを前に、自身の持ち分を管理する投資会社の少数株15%を、米サイバーセキュリティ大手CrowdStrikeの創業者兼CEO、ジョージ・カーツに売却したと発表した。S&P500に名を連ねるテクノロジー企業のトップを、オーナー陣に迎え入れた形だ。
2025年12月初旬、2025年シーズン最終戦を前にしたアブダビのヤス・マリーナ・サーキットで、ヴォルフはこの判断の背景をこう説明した。「ジョージは、レーサーとしての顔を持ち、メルセデスAMGの長年のパートナーでもあり、同時に卓越した起業家でもある。こうした要素をすべて兼ね備えた人物は非常に珍しい。レースの厳しさと、テクノロジー企業を成長させていく現実の両方を理解している」。
ヴォルフはまた、レースの世界とテクノロジー業界の双方に通じた人物である点を重視したとしたうえで、米国における人脈や知見をチーム運営に生かしてもらうことを見込んでいると語った。
技術とレースの両面を知る人物と組み、データ分析で競争力を向上
カーツは、CrowdStrikeを世界有数のAI活用型サイバーセキュリティ企業へと育て上げた人物であり、耐久レースで実績を持つレーサーとしても知られる。CrowdStrikeが2018年にメルセデスAMGのグローバルパートナーとなって以降、両者は協力関係を築いてきた。現在、カーツはテクノロジー・アドバイザーとして、メルセデス・ベンツ会長のオラ・ケレニウス、INEOS創業者のジム・ラトクリフ、そしてヴォルフとともに、チームの戦略運営委員会に名を連ねている。
「このスポーツは、今も成長を続けている。米国に限らず、世界規模で大きな可能性があり、あらゆる層のファンに広がる力を持っている」とカーツは語る。
彼は、7年間にわたってパートナーとして関係を築いてきたことを踏まえ、チームの持ち分を取得するのは自然な流れだったと振り返る。「チームの内側をよく知るようになり、信頼関係が深まる中で、魅力的なビジネスの機会が重なった。そうした巡り合わせだったと思う」。
カーツは、モータースポーツにおける競争力の強化やデータ分析、パフォーマンス向上といった分野で、チームの技術戦略とイノベーションを支える役割を担う。同時に、米国を起点とするテック業界との関係を深め、メルセデスのF1チームをより大きな技術エコシステムの中に位置づけていく考えだ。
「レースで勝つことと、サイバーセキュリティの要件を満たすことは、本質的にはよく似ている」とカーツは語る。「スピードと精度、そしてイノベーションが欠かせない。ミリ秒単位の差が結果を左右し、実行力がものを言う。最後に勝敗を分けるのはデータだ」。


