成長企業を見極め、長期投資を信条とするスコットランドの老舗資産運用会社「ベイリー・ギフォード」。イベント参加のために来日した同社パートナーのスチュアート・ダンバーに、投資哲学や今後の市場見通しについて話を聞いた。
三菱UFJアセットマネジメント主催による「ベイリー・ギフォード 資産運用フォーラム 2025」が2025年11月26日、東京ミッドタウン八重洲で開催された。
スコットランド・エディンバラに本社を構える1908年創業のベイリー・ギフォードは、三菱UFJアセットマネジメントが協業する運用会社。ファンドマネジャーによる銘柄選択を重視したアクティブ投資を展開し、長期投資を信条としている。そんな同社パートナーのスチュアート・ダンバー(以下、ダンバー)が「ベイリー・ギフォード社の描く未来」と題して講演し、多くの個人投資家らを前に、同社の投資戦略について語った。講演を終えたダンバーに、投資哲学や市場観について話を聞いた。

市場は未来が正確に見えているわけではない
ベイリー・ギフォードの大きな特徴は、パートナーシップ制の独立系運用会社であることだ。外部株主から短期的な利益を求められることがないため、腰を据えた長期投資が可能だという。
「私たちの投資期間は5~10年。重要なのは、将来性の高い企業がその期間にどれだけ成長できるかです。2年間で価値が10%や20%上がる企業よりも、長い時間をかけて5倍、10倍、場合によっては100倍まで成長する可能性を秘めた企業を探します。企業が大きく成長すれば、いずれ株価はその実力に追いつく。これが私たちの投資哲学です」
なぜ5年以上という時間軸にこだわるのか。その背景にあるのは、成長企業の本質を信じる長期的視点だ。
「企業のファンダメンタルズ(基礎的条件)が5年間成長すれば、株価に影響を与える投機筋のノイズを吸収できます。成長率が最も高い上位20%の企業を特定するのは難しいですが、5年先を見据えれば、市場全体の成長を上回る企業をつかめる確率は高くなると考えています」
その一例として、ダンバーはアマゾンを挙げる。
「アマゾンは04年11月から25年7月末までの間に株価が116倍になりました。しかし、ある1年間だけ切り取れば63%も下落した時期があります。これはアマゾンプライムをローンチしたころで、市場は『うまくいくはずがない』と評価したためでした。
しかし実際には、プライムは極めて優れたサービスへと成長し、株価の急落は市場の過剰反応でした。このように、株式市場は短期的な視点で動きますが、未来を正確に映しているわけではありません。急成長企業では、この種の一時的な下落はごく自然に起こりうる現象なのです」
成長企業への投資には、その将来性を見抜く力が欠かせない。その精度を高める鍵は情報収集にある。ベイリー・ギフォードでは、学者や起業家とのネットワーク構築に力を入れており、米サンタフェ研究所もそのひとつだ。
「バッテリー技術に対する関心を最初に示してくれたのがサンタフェ研究所でした。それがきっかけで、当時まだ無名に近かったテスラのアーリーステージに投資しています。ほかの投資家がもっていない情報を誰よりも早く手に入れ、素早く行動することが重要なのです」
さらに、投資先との関係構築も長期投資の核心だという。ベイリー・ギフォードは、長期にわたって株式を保有するスタイルだからこそ、世界中の企業を定期的に訪問し、経営陣との対話を重ねている。会計処理の透明性を確認する目的もあるが、それ以上に重要なのは、経営者を鼓舞し、より高い成果を引き出すことだ。
「私たちが求めるのは、経営陣が大きな成果を追求する姿勢です。そのためには私たちと同じ志をもち、長期的な成長に向けて歩調を揃えてくれることが必要です。技術革新や市場変化によってチャンスが見込める場面では、短期的な利益を犠牲にしてでも大胆に投資する企業を高く評価しています。当社が投資する企業は、研究開発に一般的な企業の4倍ものコストをかけているのが特徴です」
NVIDIAの躍進をどう見るか AIバブルは崩壊しない?
ベイリー・ギフォードのポートフォリオには、AIをはじめとするテック企業が数多く含まれる。昨今はあまりの過熱ぶりに、AIバブルの崩壊を危惧する声もあるが、ダンバーは冷静だ。
「例えばエヌビディアは、株価が急騰しましたが、この3年間で利益が8倍近く増えており、過去10年平均のPER(株価収益率)を踏まえれば、むしろ割安と言えます。半導体チップ需要が一瞬で消えない限り、バブルと呼ぶのは適切ではありません」
ただしAIは裾野が広いため、分野によっては慎重に見極める必要があるという。
「例えばマイクロソフトなどのプラットフォーマーは、AIに巨額の投資をしています。もし市場価値が『AIエンジンの提供者』に集積されるなら、莫大な利益を生むことが予想されるため、バブルに該当しません。
一方で、その価値が、『ビジネスモデルのなかにAIを組み込んでいる企業』に集中する場合、過当競争となり、そうした企業の間ではバブルが起きる可能性があります。AIは大きな価値を生み続けていますが、最終的にそれがどこへ向かうかは誰もわかりません。だからこそ、私たちはオープンマインドを保ち、目の前の動きだけで判断しないようにしています」
先が見えないのはAIだけではない。トランプ大統領による関税政策の行方も不透明だ。株式投資のリスクにならないのか──。この問いに対し、ダンバーの見解はこうだ。
「確かに関税は課題で、政治環境も厳しさを増しています。しかし当初懸念されたほどの影響は出ていません。多くの企業が巧みに対応しているからです。TSMCは米テキサスに新工場を建設し、CATLも中国国外に複数拠点を展開しています」
さらにダンバーは、米国市場の相対的な存在感低下にも触れる。
「企業によって事情は異なりますが、対米輸出の重要度が低い企業は少なくありません。中国やインド市場は巨大で、アジア域内の貿易規模はアジア・西洋間を上回っています。関税の議論は西洋中心の視点に偏りすぎています。『米国は多くの企業にとって最重要市場ではない』という現実が理解されるには時間がかかるでしょう」
不確実性が高まる世界でも、投資の軸はぶらさないとダンバーは強調する。
「世界には問題が山積みですが、大切なのは先を読む力です。企業の着実な進歩はニュースになりにくい。しかし私たちはそこに目を向けます。10年後にその企業が潜在力を発揮できるか。私たちは徹底したリサーチに基づき、その本質的な価値を見極め続けていきます」
ベイリー・ギフォード
https://www.am.mufg.jp/lp/bg/?aic
※三菱UFJアセットマネジメントHPに遷移します。
スチュアート・ダンバー◎1993年ストラスクライド大学卒業。2003年にベイリー・ギフォードに入社。パートナーとして営業、マーケティング、商品開発を統括。
※投資における元本や収益は保証されたものではありません。



