健全な感情が、業績の改善につながる理由
高い実績をあげるチームは、「感情的に中立」というよりはむしろ、感情をコントロールする能力が高いものだ。こうしたチームは、感情に支配されることなく、感情の表出を許している。激しい感情が表出する場所を作りつつ、生産的なレベルに留めることができる。
モチベーションに関する研究では一貫して、感情が努力の原動力であることが示されている。人は、感情的につながりを感じられることに関して、よりいっそう努力するものだ。情熱があれば、粘り強く取り組むことができる。失望も、表に出た時には、改善を後押しする力となる。リーダーが職場から感情を遠ざけると、それと同時に、部下が自由裁量による努力を続ける原動力も奪われてしまう。
感情はまた、信頼を強化する。あらかじめ準備されたものではなく、心からの反応を目にしたとき、チームの団結は深まる。懸念や興奮、不満といった感情を、思慮深い形で表明できるリーダーは、心理的安全性を生み出し、それによって部下たちも、自分たちの立ち位置を理解できる。こうした明確さは、不安を増やすのではなく、減らしてくれる。
イノベーションも、感情面の影響が大きい。新しいアイデアは、感情面でのリスクを伴う。アイデアを提案するには熱意が必要だし、反対の声からアイデアを守るには「折れない心」が不可欠だ。感情的にフラットな環境において、アイデアは無害になるまで薄められてしまう。創造性は、人がはっきりと思い入れを示すことが許される環境でしか維持できないのだ。
混乱を招くことなく、職場に再び情熱を招き入れるためにリーダーができること
職場が目指すべきは、感情によって引き起こされる混乱ではなく、「感情の表出が許される環境」だ。ここは、全体のトーンを規定するリーダーの出番だ。一線を越えないように注意しながら情熱を示せば、他の人もそれに続くはずだ。感情を明確に表現すれば、それが当たり前のこととして受け止められるようになる。
すぐに実行できるシンプルな方法としては、議論の中で、感情を明確に「ラベル付け」するというものがある。「このプロセスをめぐっては、多くの不満が渦巻いている」あるいは「この方向性には、皆が心からワクワクしているようだ」といった発言は、感情を大袈裟にすることなく、体験を正当に扱うことができる。こうした表現は、感情をオープンな場に持ち出し、対応を可能にする。
もう一つの方法として、判断と感情を切り離すやり方がある。情熱は偏見ではなく、不満は不服従ではない。リーダーが部下の感情を正そうとするのではなく、好奇心を持って接するようにすれば、他の人にも、正直に思いを話すことへの安心感が生まれる。
フィードバックの仕組みも重要だ。結果だけを重視するのではなく、ディテールを語り、気持ちを表現することを促そう。部下が活気を得る要素と、疲弊する要素が何なのか、問いかけよう。こうした問いかけへの回答は、パフォーマンスについて、さまざまな指標よりも多くのことを明らかにしてくれるはずだ。
最後に、リーダーは、重要な局面で激しい感情の表出を許容しなければならない。大きな決断や、多くのものがかかったプロジェクト、大きな意味を持つ失敗例といったものは、感情の起伏を当然伴うべきだ。こうした場面で、リーダーが適切な形で情熱を表出させれば、その仕事の重要性を示すことになる。
感情的にフラットな職場は、成熟のサインではない。むしろ、恐れのサインであることが多い。成功を収めるのは、職場から感情を排除するのではなく、感情をうまく活用できる組織だ。
プロ意識を保つ上で、感情の抑制は必須条件ではない。必要なのは、感情をうまく用いるスキルだ。従業員のエンゲージメントが弱まり、意義を見いだしにくい今のビジネスの世界で、健全な情熱を取り戻すことは、リーダーに残された、最も戦略性の高い手だてになる可能性を秘めている。


