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2026.01.15 14:15

クマだけじゃない「獣被害188億円」に一石、製缶大手+辻󠄀調が「ジビエ缶詰」で

出展:農林水産省:全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和6年度)

出展:農林水産省:全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和6年度)

野生鳥獣による農作物被害は日本における重要課題の1つだ。農林水産省のデータによると、野生鳥獣による令和6年度の全国の農作物被害は実に188億円で対前年度24.0 億円増、被害面積は4万4千ヘクタールと同4千ヘクタール増、被害量も73万トンで同22万トン増。とくに、昨今ではクマによる人的被害なども増加していることは周知の事実だ。

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こうした被害の増加を背景に、野生鳥獣の捕獲量も年々増加傾向にある。被害防止のための補助金、自動捕獲装置などによる「スマート捕獲」普及事業、自治体主導の対策強化や「鳥獣被害対策優良活動表彰」など、公的な対応、そして報道によって注目が高まっていることも要因だ。

一方で捕獲後は未だに9割程度が廃棄処分されているといい、その利活用は大きな課題といってよいだろう。

 

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「缶作り」のプロと辻󠄀調が「捕獲後の野生鳥獣をグルメ缶詰に」

そんな中、東洋製罐グループホールディングスが、辻󠄀調理師専門学校と約3年間にわたり、意外な課題解決手法を使った研究開発に取り組んでいた。「レトルト」である。東洋製罐グループは、製缶の技術の他に食材を常温で長期保存可能とするレトルト技術も保有している。

そして誕生したのが 「長野のジビエ三種缶」(2025年末、クラウドファンディングを通じ、「+GIBIER プロジェクト」として販売開始、使われているのはすべて鹿肉)。

ジビエの利活用には、大きく3つの課題が存在するという。

1つ目が「安全性」。野生鳥獣は菌やウイルス、寄生虫などさまざまな病原体を保有している可能性がある。そのため、衛生面の整った認証施設で正しく処理し、調理の際も適切に加熱する必要がある。

2つ目は「流通と保管」だ。もともと、食肉用ではなく農作物の鳥獣被害対策として捕獲されるため、安定的な需給計画を立てることが難しい。加えて個体差も大きい上、保管には冷凍設備も必要。よって、レストランなどのメニューに加えることは非常に困難で、外食産業におけるジビエ利用のハードルとなっている。

3つ目の課題は「手間」だ。前述のとおり、適切な処理や加熱によってしっかりと殺菌を行う必要性があるため、ジビエ調理には専門的な知見を有した人材が関わることが推奨される。またスネ肉や首肉などの部位は、肉を柔らかくするために長時間煮込む必要があるなど、提供側の労力がかかることも利活用の妨げとなっている。

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構成=石井節子

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