これら3課題の解決のために、東洋製罐グループと辻󠄀調理師専門学校がたどり着いたのが「レトルト」という回答だった。
加圧加熱殺菌を用いたレトルト技術を応用することで、菌やウイルスを死滅させてジビエを安全に食べられるようにする。また、常温で長期保存可能にもなる。捕獲のタイミングが不安定なジビエ肉の需給を安定させることにも寄与する、という。「+GIBIER プロジェクト」サイドは「加熱済みのため開封してすぐに食べられるほか、調理の際は最後に焼き目を入れる、混ぜるといった仕上げだけで調理が完了する。飲食店などでの取り扱いが容易になることも利点」としている。
筆者も「Confit de chevreuil~柑橘香る鹿肉と大豆のコンフィ~」「CERVO ALLA CACCIATORA~鹿肉とトマトの猟師風煮込み~」を試食する機会を得た(もうひとつは、「鹿肉の清酒煮~出汁と鹿肉の風味を活かした肴」)。
残念ながらふだん鹿肉を口にする機会がほぼないため、レストランのキッチンで捌かれた鹿の肉と比較することはできなかったが、遠い過去に食した鹿肉料理の記憶が蘇るような特有の香りと味わいは体感できた。辻󠄀調推薦の「アレンジレシピ」があることには試食後に気づいたが、食べ手に課される手間は基本的にゼロ。缶を開けて皿に移しレンジ加熱するだけ。その分、缶に詰められるまで長い工程の仕事がほどこされていることは舌でも歯でも嗅覚でも感じ取れ、重めの赤ワインのあてとしてなかなか贅沢な1品と感じた。
3種セットで4000円程度(クラウドファンディングで、購入できる価額は変動する)を高価とみるか買い得とみるかはそれぞれ。いずれにせよ、冒頭の社会的課題へのこの果敢なる取り組みが持続可能となるや否やは、経済的利益の面にも左右されよう。すなわち、われわれがどこまで参加できるかにも委ねられる。


