2026年1月1日に発表された研究成果では、「3次元電離圏トモグラフィー」という手法を用い、日本全国に設置された約1300地点のGNSS(全地球航法衛星システム)連続観測網「GEONET」の膨大なデータを解析。ここで鍵となったのが、新たに提案された「FCIT(Fast Conjugate gradient Ionospheric Tomography)」というアルゴリズムだ。この技術により、約35万個もの細かな立方体(ボクセル)に分割された空間情報を、30秒間隔という高頻度かつ高速で処理することが可能となった。
この新技術を用いて、2024年の能登半島地震の前後の様子を再解析したところ、震央直上において、地震発生の約1時間前から、特定の高度で電子数密度が変化する様子が立体的に捉えられた。高度190キロメートル、250キロメートル、310キロメートルといった異なる高さごとに、電子数の増減の仕方に違いがあることが判明。これは、2次元的な解析では見落とされていた「高さ方向の構造」が、前兆現象の把握に不可欠であることを示している。
研究チームはさらに、この解析結果の妥当性を検証するため、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が運用する「イオノゾンデ」による実測データとの比較も行っている。解析データと実測データの数値には一部乖離が見られるものの、電子密度の増減の傾向については大方一致しており、手法の有効性が裏付けられた。
今回の研究成果は、地震予知という難題に対して大きな一歩となりうるだろう。今後、観測網の充実とビッグデータの解析処理速度の向上が図れれば、地震発生前の警告が可能になる未来が現実味を帯びてくる。高度なデータ解析技術が、私たちの命を守る社会インフラの核となる日は、そう遠くないかもしれない。
出典:京都大学大学院情報学研究科物理統計学分野「2024年能登半島地震発生直前に電離圏電子数密度が異常増加したことを発見」「2024年能登半島地震前後の電子数密度変化についてー続報ー」より


