自閉症の子どもたちとの出会いを機に、世界規模のサッカー大会を主催
事業の成功により、トーラスはぜいたくな暮らしを楽しんでいる。噴水を備えた広大な地中海風の邸宅に、パブロ・ピカソが手がけた陶器の水差しのコレクションを並べ、2軒のスペイン料理店を経営する。そのうちの一つ、スペイン人シェフのルイス・ロヘルと共同で運営するカタルーニャ風レストラン「BCN Taste & Tradition」は、昨年ミシュランの星を獲得した。
トーラスは長年、自宅裏のフィールドでサッカーの練習試合を主催してきた。3年前、サッカーをしている自閉スペクトラム症の少年2人に触発された彼は、ヒューストンを拠点とする「ユナイテッド・ジェニュインFC」を立ち上げた。このチームは、自閉症やダウン症などの神経多様性を持つ選手だけで構成されている。2024年には、同じく神経多様性のある選手を対象とした大会「ジェニュイン・カップ」を創設した。2025年8月に開催された直近の大会では、世界各地から30チーム、800人の選手が集まり、ライス大学のスタジアムでプレーした。
「あまりに弱くて、1点も取れないチームもあるが、自閉症の人にとって最大の課題は人間関係だ。チームスポーツは、その関係性を劇的に改善する」とトーラスは語る。
彼はまた、ヒューストンでは、神経多様性のあるスタッフだけでスペイン風シャーベットを提供する店「ロカンボレスク」も開いた。「世界には、2500万人の神経多様性を持つ人々がいる。彼らを社会に統合すると、こちらの人間性も磨かれる」とトーラスは語っている。
ヒューストンの神経多様性コミュニティを研究するライス大学キンダー都市研究所の所長ルース・ロペス・ターレイは、「彼は、自分と異なる性質を持つ人と、本気で関わろうとしている」と語る。
ヒューストンの名士や取引先からの協力のもと、年間約3億円超の運営費を賄う
トーラスは、「ジェニュイン・カップ」の年間200万ドル(約3億1000万円)超にのぼる開催費用を賄うため、ヒューストンの名士やTricon Energyの顧客に支援を呼びかけた。テレムンド、バンク・オブ・アメリカ、ゴヤといったスポンサーを招き、BCNで昼食会を開いたほか、野球界のビリオネア、ジム・クレインにも協力を取り付けた。バンク・オブ・アメリカのプライベートバンカーを務めるシルビア・サレは、「彼は地域社会において本当に大きな存在感を放っている」と語る。
今年のFIFAワールドカップに備えた動きも本格化している。その一例が、熱心なサッカーファンとして知られるエネルギー業界のビリオネア、ジョン・アーノルドが先日、トーラスの自宅を訪れたことだ。アーノルドは、ヒューストンで開催される7試合を統括する組織委員会の委員長を務めており、トーラスは、Tricon Energyの最高サステナビリティ責任者を同委員会に送り込み、運営を支えている。彼はまた、ワールドカップ終了後には、これまでで最大規模となるジェニュイン・カップを開催する考えだ。
世界第2位の化学品商社として地位を固め、首位のドイツ企業を猛追
Tricon Energyの経営に関しては、トーラスはシビアな姿勢を取っている。業界調査会社ICISによれば、2024年の売上高が130億ドル(約2兆円)に達したTricon Energyは、化学品トレーダーとして世界第2位に浮上した。同社の売上高は、2023年にアポロ・グローバルとアブダビの政府系ファンドが81億ドル(約1.3兆円)で買収したユニバーを上回っている。
トーラスは今、この分野で首位に立つ売上高が163億ドル(約2.5兆円)、時価総額70億ドル(約1.1兆円)のドイツのブレンタークに追いつこうとしている。「彼らはバックミラー越しに我々を見ている。この会社は彼らを追い上げている」とトーラスは語った。


