宇宙産業への投資額を過去最高に押し上げた、スペースXの圧倒的な影響力
宇宙テクノロジー、人工知能(AI)、エネルギー、モビリティなど幅広い分野にまたがるスペースX出身者のスタートアップは、この10年間で合計106億ドル(約1.66兆円)を調達し、7000人を超える雇用を生み出してきた。
ただ、スペースXほどの規模と影響力を持つ企業であれば、こうした数字は決して異例ではない。ベンチャーキャピタル(VC)の投資動向を追跡するCrunchbaseの推計によると、グーグル出身者が創業したスタートアップは2000社を超え、メタ出身者による企業も800社以上にのぼる。これと比べると、スペースX出身者が創業した企業は(Crunchbaseのデータ上では)約60社にとどまり、NASA出身者による約160社、テスラ出身者による約150社という水準と概ね並ぶ。また、スタンフォード大学経営大学院のイリヤ・ストレブラエフ教授によると、テスラ出身者が創業したスタートアップのうち、9社がすでにユニコーン企業へと成長している。
宇宙分野に限れば、スペースXの影響力は疑いようがない。投資家の多くは、宇宙テクノロジーへの投資が急拡大した最大の要因に、同社の存在を挙げる。2025年の宇宙テクノロジー分野への投資額は過去最高の107億ドル(約1.67兆円)に達し、2020年からほぼ倍増した。そのうち少なくとも14億ドル(約2198億円)は、スペースX出身者が関わる企業に投じられている。
こうした動きを可能にしたのが、ロケット打ち上げのコストを引き下げ、頻度を大幅に高めることで、宇宙へのアクセスを現実的なものにしたスペースXの取り組みだ。これにより、軌道上での新たなビジネス機会が次々と生まれた。実際、スペースXは2025年に165回の打ち上げを実施していた(2018年に米国の宇宙関連企業全体で行われた打ち上げは42回にとどまり、そのうち21回がスペースXによるものだった)。
投資家が評価する「専門的な知見」「独自の課題解決アプローチ」
2025年12月、トランプ大統領は2028年までに宇宙産業へ少なくとも500億ドル(約7.8兆円)の追加投資を行うことを約束する大統領令に署名した。「現在我々が宇宙を投資対象として語っている最大の理由は、スペースXの存在にある」と、スペース・キャピタルのアンダーソンは語っている。
宇宙テクノロジー分野の投資家にとって、スペースXを離れた社員の動きを追うことは、今や仕事の一部になっている。「誰が同社を去り、その後どんなことに取り組もうとしているのかを、我々は非常に注意深く見ている」と語るアンダーソンはこれまで、スペースX出身者が創業したImpulse Space、Varda Space、Lux Aeternaなどに投資した。「スペースXでの1年の経験は、既存の業界企業での10年分に相当する」と語る彼は、「マスクが築いた企業文化のもとで育った創業者は、専門的な知見と独自の課題解決アプローチを身に付けている」と指摘する。


