
家具もしかり。店内で使用している「KOMA」という家具工房でデザイン・製作したエレガントな椅子はすでに何脚も売れているという。しかも家具を作るときに出る廃材も溶かしてパルプ状にし和紙を漉く。2026年にはその紙でワインリストを作る予定だという。
「マージの価値が高まれば高まるほど、伴走者であるビジネスパートナーの価値も高まり、投資もスムーズになる」というのが柴田氏の考え方である。その背景には、海外のレストランと比較したときに、日本の店は「ビジネスモデルにおいて圧倒的に遅れている」という課題感がある。
「先日もデンマークに行って『ノーマ』を、またペルーで『セントラル』を見てきましたが、見事にビジネスモデルが構築されているんですね。随分考えさせられました。自分におきかえて、何ができるかと。そこで考えたのが、日本の素材のことをもっと知りたいということです。いぶりがっこを、ルイベを、島原そうめんを……。でも体は一つしかない。
そこで、各地にマージの支部を作ることも考えています。そしていろいろな情報を集積していく。実はラクレリエールがあった場所は、若手がポップアップなどに使うラボとして残してあるんです。全国からの情報をそのラボに集めて分析する。そこまでいけば『ノーマ』や『セントラル』にも負けないレストランができるはずです」
レストランでは、8月の最終週から9月の3週くらいまでは夏枯れの時期といわれ、来客が減る。その時期、地域ではきのこや秋野菜が旬を迎えて面白いのだそう。だから、その時期だけマージの半分は地方で営業するという手法も楽しいのでは、とも考えているという。「私もそのときは、店はまかせて外に出る。そんな営業もありだと思います」。

直近の目標としては5年でミシュラン三つ星を取り、世界に出ること。次の5年で複合施設に出ること、そして次の10年から15年ではマージを中心とした街づくりをすることだそうだ。それは必ずしも東京ではなく、地方でもかまわないという。
「100年後、もちろん私は生きていないわけですが、その時マージに関わっている人がすべからく幸せであってほしいと思っています」。近い将来と遠い未来のことを同時に描きながらレストランを設計していくことで、従来にはないスケールの大きな店を作ることができるのだろう。


