領域は異なるものの、登壇者たちが共通して語っていたのは、人と人が出会うことで生まれる予期しない化学反応、感情と感情が交錯して立ち上がる物語、現時点の技術では計算しきれない複雑さへの期待だった。
それは確かに、いまのAIには代替しにくい領域だろう。でも「いまは」という留保がつく。それは結局計算能力の問題であると思われるし、時間が解決してしまうかもしれない領域だからだ。
そんなことを考えていたとき、カルチャーをテーマにした文筆家デーヴィッド・マークスとのダイアログで、ラッパー/クリエイティブディレクターのTaiTanが放った言葉が響いた。
「AIがそこそこのものをつくれる時代に、『俺はこれがつくりたいからつくる』という人間の動機にこそ、ファンがつく」
AI時代における人間の価値を、「まだAIにできないこと」ではなく、「それでもやりたいという意志」に見出す視点。防波堤を築くのではなく、自分の旗を立てる。その力強さに、少し救われた気がした。
慶應義塾大学教授の宮田裕章は、「普通に過ごしていたら気づかないくらいの小さな違いにフォーカスしてみよう」と語り、メディアアーティストの落合陽一は土着のもの、ニッチなものを徹底的に深掘りして「唯一無二」と出会う方法論を示していた。これら3人が登壇したそれぞれのセッションについては、年明けに改めて詳しくお届けしたい。
丸ビルホール最は、経済産業省が今年新たに立ち上げたアワード「Art & Business Award 2025」の授賞式が行われ、太宰府天満宮の仮殿プロジェクトやヘラルボニー、ベネッセアートサイト直島など、アートとビジネスの共創により、企業価値の向上、経済価値の創出を実践する取り組みが表彰された。
2日間を終えて思うのは、このイベントの価値はセッションの内容だけではない、ということだ。ロビーでの偶然の再会、展示作品の前で作家と交わす会話、期待していなかったセッションで思わぬ言葉に出会う瞬間。計算外の余白が、確かにあった。
来年のFUTURE VISION SUMMITではどんな問いが立てられるのか、いまから少し楽しみにしている。


