AI時代の生存戦略とアート FUTURE VISION SUMMIT 2025 レポート

(c)若原瑞昌

12月9日、先述のカンファレンスのキーノートでは、日比野学長に加え、東京大学総長の藤井輝夫、PwC Japanグループ チーフ・ストラテジー・オフィサー兼チーフ・イノベーション・オフィサーの桂憲司が登壇した。

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キーノートセッション「知と創造が拓く未来」(c)Junpei Kawahata
キーノートセッション「知と創造が拓く未来」(c)Junpei Kawahata

25年4月、東大は実に70年ぶりとなる新学部カレッジ・オブ・デザイン(CoD)を2027年に開設すると発表。その翌月、東大と藝大は包括連携協定を締結した。そして両者はいま、CoDが置かれる予定地で、両学生による「浅野キャンパスに美しい穴を掘る」というプロジェクトを行なっているという。

なぜ、穴なのか? そこから何が得られるのか…? そんな議論のなかで桂は、「深い穴を掘るには、広く掘らなければならない」と語った。よく「広く浅く」と言われるが、「広く深く」というわけだ。

ここで桂は、AIと人間の関係に話をつなげる。これまでのAIは最適解を導き出す、いわば「畳む(効率化)」ための道具だった。しかし、生成AIが登場し、その役割は「広げる(構想)」ことへとシフトしている。人間が思いもつかないようなアイデアをAIで広げ、入り口を最大化する。その上で、「本当にこれでいいのか」「これが美しいのか」と自らに問い、膨大な選択肢から絞る。その一歩を踏み出す意志と責任こそが、いま人間に問われている力だ。

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しかし、そこで“正解”を見通すことは極めて難しい。続くステージでは、コクヨやファミリーマートの経営者が、それぞれの言葉で「正解のない問いに向き合うこと」の価値を語っていた。

大阪・関西万博の“大屋根リング”を手がけた建築家の藤本壮介と、シカゴで地域再生も手がけるアーティストのシアスター・ゲイツ(オンライン)の対話では、物理的な空間よりも、そこに流れる時間や記憶、人が集うことで生まれる「人間的尺度」に話題がおよんだ。

(左から)NEW INC Director/アーティストのSalome Asega、アーティストのシアスター・ゲイツ、建築家の藤本壮介(c)若原瑞昌
(左から)NEW INC Director/アーティストのSalome Asega、アーティストのシアスター・ゲイツ、建築家の藤本壮介(c)若原瑞昌

テクノロジーが進化するほど、人はプリミティブな身体感覚を求めるようになる。効率を追い求めた先に「非効率な豊かさ」が待っているとしたら、なかなか皮肉な話だ。でもこの会場にいる全員が、その皮肉をどこかで楽しんでいるようにも見えた。

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文=青山鼓 編集=鈴木奈央

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