AI時代の生存戦略とアート FUTURE VISION SUMMIT 2025 レポート

(c)若原瑞昌

(c)若原瑞昌

100人がリンゴを描けば、100通りの絵ができる──。

東京藝術大学学長の日比野克彦は、キーノートセッションで集まったおよそ200人を前にこう語った。「アートは答えが一つではないことを受け入れる力だ」と。

AIが過去のデータから最適解を導き出す時代に、なぜ私たちは「正解のない問い」に向き合う必要があるのか。12月9日・10日、日本有数のビジネス街である大手町・丸の内・有楽町(大丸有)を舞台に開催されたFUTURE VISION SUMMIT 2025は、その問いを手がかりに未来を見通そうとする2日間だった。

同イベントは、Forbes JAPAN、リガーレ(大丸有エリアマネジメント協会)、YAU(有楽町アートアーバニズム)による実行委員会が主催し、今年は東京藝術大学が共催に加わった2回目の開催である。

丸ビル7階の丸ビルホールで丸一日行われるカンファレンスと、8階と三菱ビルで2日間にわたって開催されるセッション、ショーケース、ワークショップの数々。頭で考えるパートと、手や身体で感じるパートが隣り合わせになっている構成は、このイベントの性格をよく表していた。

セッションは登壇者を囲む会場で。「アート起点の企業協創のあり方を探る~その素晴らしさと難しさ~」の様子(c)Junpei Kawahata
セッションは登壇者を囲む会場で。「アート起点の企業協創のあり方を探る~その素晴らしさと難しさ~」の様子(c)Junpei Kawahata

ショーケースでは、アーティストたちのリサーチのプロセス展示や企業とアーティストの協働から生まれた展示が行われていた。DENSOとAGCによる「赤と青の間の風景 内像」という展示で、光を素材にした作品の前で足を止めていると、参加作家の一人が声をかけてくれた。

カンファレンスやセッションで語られる「アート×ビジネス」は、どうしても抽象的になりがちだ。でもここでは、作家の手から生まれた作品が目の前にあり、ガラスの特性、光の屈折、表現したかったことを尋ね、その人の言葉で聞くことができる。一方向で終わらせないというイベントの意図が随所に感じられた。

「赤と青の間の風景 内像」を見学する東京芸術大学の日比野学長(右)(c)Junpei Kawahata
「赤と青の間の風景 内像」を見学する東京芸術大学の日比野学長(右)(c)Junpei Kawahata

会場では知人とばったり顔を合わせる場面が何度かあった。「来てたんですね」「あのセッション、面白かったですね」。オンライン配信では得られない偶発性。それも、このサミットのテーマを体現していた。

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文=青山鼓 編集=鈴木奈央

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