2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻は、直前の国境付近でのロシア軍の兵力集結と演習から始まった。今回の演習では幸い、米国などのインテリジェンスから「演習が具体的な侵攻につながる」というメッセージは発信されていない。おそらく、武器弾薬や兵力が集結する具体的な兆候が出ていないからだろう。ただ、「オオカミ少年」ではないが、演習に慣れてしまった頃が逆に危険だともいえる。前述したように、攻撃に踏み切らないまでも演習を長期化させて事実上の経済封鎖に持ち込むこともできる。
前述の外務省元幹部は「中国専門家は2027年までに台湾有事は起きないと主張するが、却って危うさを感じる」とも語る。トランプ氏の弱いメッセージやベネズエラへの横暴な攻撃が、中国を勇気づけないとも限らない。また、26年秋には台湾で統一地方選が実施される。与党民進党が大きく後退すれば、支持率が上がらない頼清徳政権は一気にレームダックに陥るかもしれない。28年5月に国民党政権が誕生すれば、中国は「国共合作」に走り、一気に「平和統一」をトランプ氏に認めさせる算段かもしれない。
2026年は中国でアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議、米国で主要20カ国・地域(G20)首脳会議がそれぞれ開かれる。トランプ氏が4月に訪中するため、習近平氏の答礼としての訪米もあるかもしれない。場合によっては4回の米中首脳会談が行われる見通しだ。トランプ氏は習近平氏との会談で、米中貿易問題を解決したい考えで頭がいっぱいのようだ。中国との安全保障上の問題にまで対応しきれていないようにみえる。逆に、中国から「ロシアと米国がウクライナ和平案を作ったように、米中で台湾を巡る解決案をつくろう」と持ち掛けられるかもしれない。
今回の中国軍の演習には、高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁に強く反対するというメッセージも込められている。中国は強硬姿勢を示して日本の危機感をあおり、高市首相答弁や、陸上自衛隊が進めている改良型地対艦ミサイルの配備を撤回させようとするだろう。日本は米議会の日本を支持する決議に謝意を表明するだけではなく、日本の国会自身が何らかの決議をするなりして、戦略的メッセージを中国に投げ返すべきだろう。


