経済・社会

2026.01.06 17:15

台湾有事を引き寄せるトランプの及び腰外交 ベネズエラ攻撃も中国の援軍に

leestat / Adobe Stock

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中国軍が2025年の年末に台湾を包囲する大規模な演習を行った。トランプ米大統領は12月29日、記者団に対して「彼(習近平中国国家主席)は私に何も言ってきていない。彼が実行するとは思っていない」「何も心配していない」と述べた。

1995年から96年にかけての台湾海峡危機の際、当時のクリントン米政権は空母インディペンデンスとニミッツを急派した。当時と比較して、トランプ氏の発言は比較できないほどに弱い反応だ。中国も30年前の米国の反応と今回のトランプ氏の発言を比較しているはずだ。
 
日本外務省の元幹部も「まったく緩い発言」としたうえで、「トランプ氏自身が、危機をおびき寄せている」と指摘する。台湾メディアによれば、中国軍艦艇は演習で、台湾をぐるりと取り囲むように展開したうえで、「接続水域」内に侵入し、「領海外縁線」ぎりぎりまで接近した。台湾発着の航空機に影響が出るなど、事実上の経済封鎖を実施したとも評価できる。トランプ氏の「何も心配していない」という発言は、中国に対して「経済封鎖くらいまでなら、米国は黙認するだろう」という誤解を与えかねない。

中国を更に勇気づけているとみられるのが、米国のベネズエラに対する攻撃だ。トランプ米大統領は1月3日、ベネズエラを攻撃し、マドゥロ大統領夫妻を国外に移送したと発表した。米メディアによれば、25年9月以降、カリブ海や東太平洋で米軍による「麻薬運搬船」攻撃によって100人以上が死亡している。

トランプ政権は「米国への麻薬の密輸がテロ行為」と強弁しているが、米国のベネズエラ攻撃の適法性について米議会でも批判の声が上がっている。これに対し、中国にとっての台湾は「内政問題」だ。「一つの中国」は、米国も日本も認めている。中国にしてみれば、米国がベネズエラを攻撃できるくらいなら、国際法上に触れないとする台湾攻撃を実施しても全く問題ないことになる。

トランプ政権は25年12月に発表した「国家安全保障戦略」で、「非干渉主義」を掲げた。南北アメリカがある西半球を米国にとっての核心的利益と位置付け、「核心的利益を守るためには、他国の侵略も許される」という論法を取る。これは、ロシアがウクライナを、中国が台湾を、それぞれ「核心的利益」と位置づけ、攻撃することを事実上黙認することにもつながる。

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文=牧野愛博

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