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2026.01.09 11:00

宇宙の放射線から人類を守る、「遺伝子改変」で有人火星探査の実現を支えるスタートアップの挑戦

米海軍およびNASA着陸・回収チームのメンバーが、2023年2月6日にフロリダ州ケープカナベラルでオリオン宇宙船の試験機から宇宙飛行士を救出する訓練を実施。回収チームは、2024年に実施予定の「アルテミスII」ミッションを皮切りに、オリオン宇宙船が太平洋に着水する際の本番に備えてテストを実施している(Joe Raedle/Getty Images)

米海軍およびNASA着陸・回収チームのメンバーが、2023年2月6日にフロリダ州ケープカナベラルでオリオン宇宙船の試験機から宇宙飛行士を救出する訓練を実施。回収チームは、2024年に実施予定の「アルテミスII」ミッションを皮切りに、オリオン宇宙船が太平洋に着水する際の本番に備えてテストを実施している(Joe Raedle/Getty Images)

ロケット技術の進歩により、有人火星探査が現実的な目標となりつつある。そうした中、生物工学の飛躍的な発展が、弾丸のように降り注ぐ宇宙線や火星の過酷な環境から宇宙飛行士を守る可能性があると、米国を代表するゲノミクスと宇宙生命科学の研究者は指摘している。

クリストファー・メイソン教授はインタビューで、自身が共同代表を務める宇宙生物医学スタートアップ「バイオアストラ(BioAstra)」が、地球の磁気シールド圏外を飛行する宇宙飛行士のDNAを、超新星爆発によって放出される宇宙線から守るための対策を検証していると明かした。

名門ワイル・コーネル医科大学でゲノミクスと計算生物学の教授を務めるメイソンは、バイオアストラが低軌道、月周回、火星周回という3段階の宇宙ミッションを通じて、防護策を検証する計画だと述べている。

スペースXが先導し、ブルーオリジン(ジェフ・ベゾスが設立した航空宇宙企業)が追随する再利用可能ロケットの技術革新により、「第二の宇宙時代」が幕を開けつつある。この新時代には、民間の宇宙飛行士が次々と宇宙へ飛び立ち、商業宇宙ステーションや月のクレーター地帯へ向かうことになると、バイオアストラの会長を務めるメイソンは語る。

連続打ち上げが可能なロケットの登場は宇宙旅行を民主化し、NASAや各国宇宙機関の飛行士だけでなく、民間の飛行士にも惑星間航海への門戸を開くことになる。回収可能なブースターの登場は、今後の宇宙探査を飛躍的に加速させるとメイソンは言う。

一方で、この技術革新は、宇宙飛行士が放射線の集中照射をくぐり抜け、地球の重力圏を超えて飛行する際の安全を確保する上で、新たな生物医学上の課題を生み出した。

メイソンは、自身が主導した新時代の宇宙競争に関する研究で次のように述べている。

「近年、商業・民間・多国籍による宇宙飛行が急速に拡大する中、低軌道では前例のない規模の活動が展開されている。有人ミッションは史上最多を記録しており、一年以上にわたる探査ミッションの準備も同時に進められている。

多くのスタートアップや国家、宇宙関連企業による急速な宇宙進出が、『第二の宇宙時代』を現実のものにしつつある。この新時代では、分子生物学や精密医療の最新ツールと手法が初めて活用され、乗組員向けの最先端医療の提供が可能になる」。

「第二の宇宙時代」に関する研究には、米国、日本、スウェーデン、ギリシャ、オーストリア、ポーランド、チリの学者たちが参加しており、深宇宙飛行における乗組員の健康を守る最先端医療の実現に向けた、国際的な関心の高まりを反映している。

メイソンによれば、この国際的な研究者ネットワークには、NASAやESA(欧州宇宙機関)、JAXAといった主要な宇宙機関の関係者が名を連ねるという。これは、将来の宇宙飛行士の安全を確保する上で、バイオテクノロジーの進歩を活かす重要性が急速に高まっていることを示している。

「産業界、学界、NGO、政府によるかつてない関心の高まりが、宇宙飛行と宇宙研究を新たな時代へと加速させつつある。地上医療では、薬理ゲノミクスをはじめとする精密医療が既に標準となっており、その潮流は近く宇宙飛行にも及ぶだろう」とメイソンは語る。

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編集=朝香実

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