メイソン自身、宇宙飛行に伴う医学的リスクに対する次世代バイオテクノロジーの第一人者であると同時に、卓越した宇宙未来学者でもある。
彼は著書『次の500年―新世界に到達するための生命工学(The Next 500 Years: Engineering Life to Reach New Worlds)』の中で、火星において宇宙飛行士が太陽嵐や宇宙線などの脅威に耐え得る遺伝的適応を身につけることが、人類が将来、超大型宇宙船団を打ち上げ、他の恒星を周回する「もう一つの地球」へ到達するための基盤になると予見している。
メイソンは、こうした恒星間航海の実現には数万年を要する可能性があると考えている。その過程では、宇宙旅行者たちが巨大な宇宙船の中で何世代にもわたり生涯を送り、最終的に未来の子孫が銀河系内の別の惑星で人類文明の新たな基盤を築くことになると彼は考えている。
月や火星での探査活動に従事する宇宙飛行士たちを守るために完成された技術は、将来的に太陽系外への航海を可能にする基盤になるとメイソンは指摘する。
放射線対策には、宇宙船の周囲の遮蔽、NASAが積極的に研究している予防的な薬剤の投与、さらには宇宙飛行士の遺伝子改変が含まれると考えられている。「太陽系外での長期ミッションにおける放射線防護の最善策は、これらの施策を組み合わせることだ」とメイソンは語る。
西欧諸国の宇宙大国が連携し、今世紀中にこうした世代を超えて航行する宇宙船団を打ち上げる可能性はあるのだろうか。
「宇宙大国が資源を共有すれば、連携はより迅速に進むだろう。こうした動きは既に始まっており、今後さらに加速すると見込まれている。細胞を保護する手法については、高度なCRISPRツールなど新技術が開発され、既に人間の病気の治療に応用されている」とメイソンは語る。
彼は、CRISPRが高性能なゲノム編集技術として大きな可能性を秘め、生物医学の未来を塗り替え得る存在だと指摘する。スウェーデン王立科学アカデミーも、2020年のノーベル化学賞を、CRISPR-Cas9という「遺伝子のはさみ」を共同発見したフランスのエマニュエル・シャルパンティエと米国のジェニファー・ダウドナに授与した際、その将来性を強調した。CRISPRは、動物や植物、微生物のDNAを極めて高い精度で書き換えることを可能にする。
「この技術は生命科学に革命的な影響をもたらした。遺伝性疾患を治療するという夢を現実のものにする可能性を秘めている。CRISPR-Cas9の登場により、生命のコードはわずか数週間で書き換えられるようになった」と、スウェーデン王立科学アカデミーはノーベル賞発表時に述べた。
メイソンによれば、CRISPRを用いた初のヒト臨床試験によって、その驚くべき潜在力が明らかになったという。この試験では、被験者の心臓発作リスクを大幅に低減する成果が確認された。
それでもメイソンは、「世代をまたぐ宇宙船の構想が実現するのは、おそらくあと数百年先」と見ている。
しかし、世界中の革新的な科学者たちが力を結集して、恒星間航行用の宇宙船の開発に取り組めば、その未来は想定よりも早く訪れるかもしれない。「この本を執筆した当時よりも、私たちは先へ進んでいる」とメイソンは話す。
星系間を航行する宇宙船や宇宙飛行士という構想はSFの話のように思える。しかしメイソンは、この挑戦を現実のものにしようとしている。彼が率いるメイソン研究所では、秘密プロジェクトチームが、「次の500年計画(The Next 500 Years Plan)」の策定に取り組んでいる。
「災害であれ、壊滅的な戦争であれ、あるいは数十億年後の太陽の死であれ、地球上の生命が終焉を迎えることは避けられない。人類を遠い未来まで存続させるためには、新たな移住先の惑星を見つけ、最終的には新しい太陽系へと移住する必要がある」と彼は語る。
「ロケットを作り、他の惑星に着陸させることを可能にしたのと同じ創意工夫を応用すれば、生物学を再設計し、他の惑星に持続的に暮らせるようにすることができる。私の研究室では、他の惑星での生活に対応する生物学的システムを再構築するための、10段階にわたる500年計画に取り組んでいる」とメイソンは語った。


