バイオアストラの創業者兼CEO(最高経営責任者)であるサヴィ・グローによれば、同社の生物科学者の多くはスペースXの大ファンであり、地球周回軌道で実施される初の計画ミッションは、スペースXの宇宙船「ドラゴン」を用いて行われる見通しだという。
バイオアストラは、3回の飛行を通じて生じる遺伝的変化を精緻に把握するため、各ミッションで一卵性双生児の片方を宇宙へ送り、もう片方は地球上に残す計画だ。地球に残る双子は、有害な宇宙線や太陽からの放射線の影響を受けない。
グローによると、バイオアストラは、月周辺への有人飛行が承認された唯一の深宇宙カプセルを開発したロッキード・マーティンと、月を通過する共同ミッションの実施について協議を開始したという。
ロッキードで有人宇宙船「オリオン」の商業サービス部門を統括するトニー・バイヤーズは、バイオアストラが月面滞在中の宇宙飛行士の遺伝子変化を記録するデータは、火星有人飛行を計画する企業にとって極めて価値が高いと指摘する。特に、火星の砂丘に初のハイテク宇宙都市を構想するスペースXや、宇宙空間に浮遊型都市を建設しようとするブルーオリジンにとっては、宝のような情報となる可能性があるという。
「スペースXが、火星に最初の宇宙飛行士を送ると確信している。我々のプログラムがこれらのミッションに貢献することを期待している」とグローは話す。「我々は、スペースXのスターシップが打ち上げられ始めたら、すぐにでも火星に人類を送る惑星間ミッションに参加したい」と彼女は付け加えた。
メイソンによると、バイオアストラは既に独立系宇宙飛行士ジャレッド・アイザックマンと共同研究を開始しているという。アイザックマンは、スペースXの宇宙服のテストや最先端宇宙飛行士訓練プログラムの強化を目的とした、二度にわたる重要な軌道飛行を指揮した人物だ。
知名度が高いアイザックマンは、慈善活動でも注目されている。彼は、支払い能力に関係なく命にかかわる病気の子どもたちを治療しているセントジュード小児研究病院に1億2500万ドル(約196億円)を寄付している。彼は、クリスマス直前に米上院議員の圧倒的多数の支持を受けて、NASAの新長官として承認された。アイザックマンは、宇宙探査の新たな黄金時代を切り拓き、世界最高峰の宇宙機関としてのNASAの地位をさらに強化すると宣言した。
「アイザックマンは、宇宙飛行の幅広い分野で先駆的な役割を果たしてきており、この重要な局面でNASAを率いるにふさわしい人物だ」とメイソンは語る。
アイザックマンは、民間企業主導の宇宙開発「NewSpace」においても、宇宙探査と実験の象徴的存在であり、NASAに加えて、この分野の推進役を担うことが期待されている。
彼は、宇宙分野においても巨額の寄付を行っており、ハッブル宇宙望遠鏡の軌道修正を目的とした、スペースXのドラゴン宇宙船ミッションへの資金提供を申し出た。このミッションには1億ドル(約157億円)以上が必要とされる。ハッブル宇宙望遠鏡は軌道が減衰しており、大気圏への落下を防ぐことがミッションの目的だ。
メイソンはアイザックマンを、次のように評する。「彼は科学に対する姿勢が卓越しており、あらゆるミッションで生物医学や科学的知見を最大限引き出すことを常に心がけている。科学者として、彼が指揮を執るのはまさに夢のような話だ」。


