ジェローム・パウエル議長率いるFRBがどう対応するかは、誰にも予測できない。しかし、ドナルド・トランプ米大統領がFRBにさらに積極的な利下げを要求していることで、同理事会の選択肢は複雑化している。トランプ大統領もスコット・ベッセント財務長官も、FRBの金融政策が過度に制限的だと主張している。
パウエル議長の任期が終了する5月までの数カ月間、市場はホワイトハウスが同議長に行動を起こさせようとさらに強硬な姿勢を取るものとみている。だが、真の問題は、パウエル議長の後任が指揮を取った後に起こるのかもしれない。FRBが、米国が必要としない流動性を成り行き任せに供給すれば、26年の世界市場は荒れる可能性がある。
トランプ大統領の貿易戦争による累積的なインフレ効果についても同様だ。カナダに拠点を置く投資調査会社BCAリサーチのピーター・ベレジン博士は「12カ月という期間で見ると、私たちはスタグフレーションの『スタグ(停滞)』の部分を『フレーション(物価上昇)』の部分より懸念している」と指摘。現在、関税はスタグフレーションが「起ころうとしている」リスクを高めていると警告した。
世界最大の経済大国である米国が1970年代に逆戻りすることは、誰にとっても望ましくない。特に、スタグフレーションの克服がどれほど困難かを考えればなおさらだ。70年代後半~80年代初頭にかけて、当時のポール・ボルカーFRB議長は物価の安定を回復させるため、短期金利を20%まで引き上げた。米国の国家債務が38兆ドル(約5900兆円)を超える現在では、それは考えられないことだろう。トランプ政権がFRBの金融引き締めを容認する可能性も低い。
日本はスタグフレーションの危機を脱したわけではない。実際、これは政治介入がピークに達している時期に中央銀行が取り組まなければならない問題との困難なバランス調整を示す典型例と言えるだろう。しかし、新年の幕開けとともに、インフレがかたくなに高止まりする一方で成長が停滞するという懸念が大きく影を落としている。


