経済・社会

2026.01.13 11:45

トランプ政権が大使を大量召還、米外交はますます弱体化

Hamza / Adobe Stock

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ロイター通信は2025年12月下旬、トランプ米政権が、大使館に「米国第一」主義を浸透させるために、約30人の大使を含む上級キャリア外交官を召還(更迭)すると伝えた。国務省は同通信に、召還対象の外交官についての情報提供を拒否したという。同省高官は召還について「どの政権でも標準的な手続きだ」と主張したが、異常事態だと非難する声が出ているという。

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複数の外交筋によれば、西アフリカ地域のフランス語圏や東南アジア、太平洋島嶼国などの大使が20人ほど召還されるという。いずれも、バイデン政権時代に大使に就任したキャリア外交官たちだ。ほとんどが50代以上のため、国務省に戻ってもポストがなく、そのまま引退に追い込まれる可能性が高いという。

米国の場合、政権ごとに多少異なるが、平均7割程度の国の大使をキャリア外交官が務める。G7など主要国には政治任用(ポリティカルアポインティー)の大使が赴く。大統領と特別に関係が深い人や、大統領選で資金集めなどに功績があった人々だ。日本も代々、政治任用の大使が着任してきた。現職のグラス大使はワイルズ首席大統領補佐官といつでも電話ができる人物とされる。前任のエマニュエル前大使はオバマ政権当時の首席大統領補佐官だった。

日本での勤務経験がある米国務省の元当局者は「日本にキャリア外交官の大使を送ったら、日本から不信の声が上がるだろう。たとえ、政治や外交に詳しくない大使が着任しても、大使館や在日米軍に優秀な人材を配しているからまったく問題は起こらない」と語る。

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ロシアや韓国のように、政権ごとに政治任用だったり、キャリア外交官だったりするケースがある。米国にとって韓国は重要な同盟国だが、政権交代で米国との距離が近くなったり遠くなったりするため、苦労する大使も多い。最近ではインド太平洋軍司令官を務めたハリス元駐韓米大使が、中国や北朝鮮に接近する当時の文在寅政権に振り回されたといわれる。当時の日韓関係が最悪の状態に陥ったため、日本人を母親に持つハリス氏もたびたび、不愉快な思いをしたという。

政治任用者に主要国の大使を取られてしまうキャリア外交官たちは、アジア地域であれば、タイやマレーシア、ベトナム、フィリピン、インドネシアなどの大使になることを夢見るという。それぞれ、米国を重視してくれる国であり、住環境もそれほど悪くない国だからだ。

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文=牧野愛博

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