今回の大量召還はトランプ政権が誕生して1年近く経ってのタイミングで実施される。ロイター通信に語った国務省高官は「標準的な手続き」としているが、実態はそうではないようだ。別の米国務省元当局者は「今回、後任選びもほとんど進んでいないようだ。これでは標準的な手続き途は言えない」と語る。この元当局者によれば、大使の任期は通常2年から3年、あるいは現職の大統領の任期内となる場合が多い。
今回も一部そうだが、通常の交代ケースではない場合、現職大使の問題点などを洗い出し、同時に後任選びも進める。この過程で、現職大使の耳にも「そろそろ交代」という情報が入るという。今回は全くこうしたプロセスを経ていないようだ。元当局者の一人は「トランプ大統領やMAGA(米国を再び偉大にという政治運動)派に気に入られるように、ホワイトハウスや国務省が忖度した結果だろう」と語る。トランプ氏は国務省を「左派の巣窟だ」として嫌っており、特にバイデン政賢が任命した大使を敵視してきたという。
ロイター通信によれば、国務省の外交関係職員でつくる労働組合の米外交協会は、一部の外交官が説明なしに電話で召還通知を受けたとの報告を受け、対象メンバーの確認を進めていると説明した。ただ、外交協会もほとんど力がないため、今回の召還を止められない見通しだ。
国務省の現役外交官たちは自分の身を守るため、押し黙っている。引退した元外交官たちは様々な米メディアで怒りの声を上げているという。元外交官の一人は「トランプ政権全体の外交政策が間違っているから、大使が更迭されても、この問題点はなくならない」と語る一方、「派遣国との関係は徐々に悪化するだろう」と語る。外交の世界には役職ごとに面会できる相手のクラスが厳格に定められている。いくら代理大使を立てても、大使と全く同じような人脈は築けない。
トランプ氏は7日、66の国際機関から米国を脱退させる文書に署名した。トランプ政権ではすでに約80の国で大使が不在のままだとされる。さらに20カ国前後で大使が空席になれば、米国の外交パワーは確実に衰えるだろう。


