3. 無駄な働きをしない目
光がまったく存在しない水深約8200mの環境では、視覚に頼ろうとするのはエネルギーの完全な浪費だ。そのためシンカイクサウオは、以下の戦略を用いている。
・体の色素を減少させた
・視覚を単純化した
・光より振動を頼るように、感覚系を適応させた
これは、完全に盲目になったという意味ではなく、視覚の利用を最小限に抑えているということだ。一般的な生物にとっては不利になり得るが、視覚がほとんど価値を持たない世界では、大きな犠牲を伴わない選択といえる。
4. 極限状態に最適化された代謝
水深8000mを超える世界における食べ物としては、微小な甲殻類、フィーカルペレット(プランクトンの糞)、植物由来の有機物、その他の海洋生物の死骸以外が見つかることはめったにない。前出の『Nature Ecology & Evolution』誌の研究によれば、シンカイクサウオは、生存のため以下の特性を保有している。
・低いが、効率的な代謝率
・チャンスを逃さない摂食行動
・低温環境に適した、エネルギー節約型の生理学的機能
摂取したカロリーはすべて重要であるため、一切の無駄なく利用しなくてはならない。こうした特性を合わせると、単に過酷な超深海帯でなんとか生き延びている生物というよりは、進化によってこの環境に完全な適応を遂げた生物の姿が見えてくる。


