欧州

2026.01.06 10:00

2025年にロシアのエネルギー情勢を揺るがした5つの出来事

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天然資源の輸出は長年、ロシア政府にとって収入を得る手段だった。エネルギー資源から得られる収入は政府の戦争資金となるだけでなく、ロシアの指導者や新興財閥オリガルヒに莫大な富をもたらしてきた。だが、2025年にロシアのエネルギー情勢は大きく変化した。同国のエネルギー業界は現在、戦争や制裁によって弱みを露呈させている。

ウクライナ側はこの状況を把握している。ウクライナ軍は25年、ロシア国内の石油精製施設に対する攻撃を激化させた。一方のロシア軍も、ウクライナの民間電力網や石油ターミナル、タンカーに対する攻撃を強化した。西側諸国はようやく、ロシアが制裁を逃れて原油を輸出するために編成した「影の船団」に対抗する動きに出た。中国はロシアの天然ガス輸出に対する支配を強めている。原子力部門では国内で財政的な制約が表面化する中、海外展開の限界も見えてきた。

ロシアにとって、エネルギー資源は戦争に勝利するための重要な役割を担っており、国庫を充実させ防衛産業基盤を維持するための主要な手段でもある。他方で、この体制は増大する圧力にさらされており、強固な国際的保証を伴う恒久的かつ持続可能な停戦が実現しない限り、長期的にはロシアを弱体化させる可能性がある。

1. ウクライナ軍の攻撃を受けるロシアの石油化学産業

ウクライナ軍はこの1年間、ロシアの石油化学産業への攻撃を反攻作戦の中核としてきた。同軍は140回以上の攻撃を実施したが、この数はこれまでの戦争期間全体を合わせた攻撃回数を上回っている。

こうした攻撃は戦略的に行われている。ウクライナ軍の標的指定は、深度と調整の両面で向上した。攻撃の対象となっているのはロシア国内の製油所やパイプライン、輸出ターミナル、港湾施設で、特に同国南部のノボロシースク港やトゥアプセ港、北部のウスチルガ港は繰り返し標的となっている。ロシア産原油を欧州に輸送する幹線パイプライン「ドルジバ」は何度も供給停止に見舞われた。ウクライナ軍の長距離飛行可能な無人機(ドローン)がロシア中西部を攻撃し、最東端では前線から東へ1700キロ離れたペルミ地方やタタールスタンまで到達した。同軍の攻撃は沖合にまで及んでいる。ウクライナ軍は黒海でロシアの影の船団を攻撃し、カスピ海では同国の石油掘削装置2基を破壊するという前例のない措置を講じた。

その影響は相乗的に増大している。ロシアの石油処理量は前年比で3~6%減少したが、影響は予想以上に大きかった。ロシア政府はガソリンの輸出を禁止したほか、ディーゼル燃料不足によって前線付近の軍事物流が滞った。国内ではガソリンを求める市民の行列が常態化し、価格が上昇した。精製所や石油化学施設の損傷により輸出利益率が縮小し、キャッシュフローが鈍化した。

1904~05年の日露戦争や79~89年のアフガニスタン侵攻など、ロシアは歴史的に、遠隔地で勃発した国家の存亡を懸けない戦争で、国内の圧力に耐えた実績が乏しい。したがって、ウクライナ軍のエネルギー施設を標的にした攻勢は、十分な規模に拡大されれば決定的な影響を及ぼす可能性が高い。

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翻訳・編集=安藤清香

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