4. 天然ガス輸出で中国依存を強めるロシア
長年遅延していた天然ガスパイプライン「シベリアの力2」敷設計画では、25年に大きな進展があった。同年9月に中国で開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議で発表された通り、同パイプラインはロシアの西シベリアからモンゴルを経由し、中国へ年間500億立方メートルの天然ガスを輸送することが見込まれている。他の輸送ルートとの組み合わせや既存のパイプラインの拡張に加え、この新たに敷設されるシベリアの力2を考慮すると、ロシアの中国向け天然ガス輸出量は年間1060億立方メートル近くに達するものとみられる。
新規パイプラインは、欧州が輸入しなくなった天然ガスを転用するために計画されている。だが、数多くの制約が待ち受けている。建設費は約250億ドル(約4兆円)に上り、その大部分はロシア国営天然ガス企業ガスプロムが負担することになる。完工までには10年近くかかる見通しだ。ガスの価格設定は不透明で、中国側は交渉力を活用し、補助金が支給されるロシア国内料金に近い水準を求めている。最も重要なのは、同パイプラインが中国中心のエネルギー市場で、ロシアを従属的な供給者としての立場に固定化することだ。ロシアは市場参入と引き換えに自律性を手放そうとしている。
5. 原子力事業の海外展開には限界も
ロシア国営原子力企業ロスアトムは25年、海外展開を拡大し続ける数少ないロシアの国営企業として際立っていた。同社は世界の原子力業界をけん引し続けている。
カザフスタンは国内初の原子力発電所建設にロスアトムを選定した。これは競争の激しい分野での大きな勝利となった。建設準備が始まり、ロシアは向こう数十年にわたりカザフスタンのエネルギー供給構造に組み込まれることとなった。ウズベキスタンでは、ロスアトムが小型モジュール炉(SMR)と大型のロシア型加圧水型原子炉(VVER)を組み合わせたハイブリッド型原子炉の建設で合意した。トルコ、エジプト、バングラデシュでも同社のプロジェクトが進展している。
他方で、成功と同時に限界も露呈した。ロシアのエネルギー当局者は27年以降の資金不足を認め、国庫補助が必要になる可能性を示唆した。トルコのアックユ原子力発電所建設の遅れは、凍結された資金と供給網の逼迫(ひっぱく)を反映していた。ロスアトムは国際的な競争力を維持しているものの、中国の国営核工業集団(CNNC)が猛追しており、世界の原子力業界では激しい競争が繰り広げられている。戦争と制裁が長期化する中、ロシアは今後、財政能力が試されることになるだろう。


