経済

2026.01.04 08:00

トランプ米政権はなぜ今ベネズエラを攻撃するのか? エネルギーと力からの読み解き

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「ドンロー主義」

トランプ政権は2025年12月、中南米など西半球への域外大国の干渉を拒否する19世紀のモンロー主義を正式に復活させた。

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21世紀版モンロー主義、トランプ政権の位置づけでは「トランプ補論(Trump Corollary)」、ほかでは「ドンロー主義」とも呼ばれるこの方針では、米州での米国の支配的地位を強調するとともに、グローバリゼーションの影響を拒絶する姿勢を打ち出している。

この視点から見れば、ベネズエラにこだわるのはそれなりに理屈が通る。ベネズエラは天然資源に恵まれており、石油の確認埋蔵量は約3030億バレルと世界最大で、米国の6.5倍超にのぼる。

長年、米国の制裁を受けてきたマドゥロは、政権延命のために中国やロシア、イランとの関係強化に傾斜した。現在、ベネズエラ産原油の大半は大幅な割引価格で中国に流れており、多くは制裁逃れのための秘密契約を通じて輸送されている。

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あるベネズエラ専門家は、米州の資源国が中国やロシアと取引するのは「トランプの世界観にあまり合致しない」と述べている。

世界経済の生命線であるディーゼル燃料

ここで話は石油、とりわけディーゼル燃料に行き着く。

ベネズエラ産原油は、比重が大きく硫黄分も多い「重質サワー原油」として有名で、精製するのが難しい。何十年にもわたり、とくに米国では、この種の原油を処理するために複雑な製油所が特別に設計されてきたほどだ。

この点が問題になるのは、重質原油は世界経済の生命線であるディーゼル燃料の生産で、不釣り合いなほど重要な役割を果たしているからだ。ディーゼル燃料は、トラック、船舶、鉱山機械、農業など、さまざまな産業の動力源になっている。

ディーゼル燃料の価格が急騰すると、すぐあとを追ってインフレが続いてきた。たとえば2022年2月、ロシアがウクライナに対する全面侵攻を始めると、重質原油とその精製製品の流通が混乱し、ディーゼル燃料の価格が跳ね上がった。その結果、世界中で食料品やその他の消費財が値上がりした。

トランプによる封鎖命令後、ベネズエラ側は、石油輸出は正常に行われていると主張した。しかし取引が滞れば、影響はベネズエラや南米にとどまらず世界経済全体に波及するだろう。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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