ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2日、国防省のキリロ・ブダノウ情報総局長を大統領府長官に任命した。同大統領は、ブダノウ氏が国家安全保障・国防会議書記らと緊密に連携し、ウクライナの防衛と発展の強化に取り組んでいくと強調した。ゼレンスキー大統領は、ブダノウ氏が任命を受諾したことも明らかにした。
ブダノウ氏は2020年8月から国防省の情報総局長を務めていた。同氏はウクライナ軍にも従軍し、中将の階級を得た。ロシアとウクライナの捕虜交換を監督する役割を担っていたほか、ロシア国内の石油精製所に対する攻撃を組織した。同氏はウクライナ東部紛争でロシアに対する戦闘にも参加した。最近では、情報総局長として組織の業務範囲を拡大し、先進技術を統合し、市民参加を促すことで組織の近代化に貢献した。こうした成果が認められ、ブダノウ氏はウクライナ政府から表彰を受けるなど、ゼレンスキー政権で重要な人物となっていった。
さらに、ウクライナの政治家や高官、国民からの信頼と尊敬も得るようになった。米カーネギー国際平和基金(CEIP)、米国際共和研究所(IRI)、全米民主国際研究所(NDI)が昨年実施した世論調査によると、ブダノウ氏は国民から極めて好意的に捉えられており、同氏を「伝説の人物」と呼ぶ国民もいる。
国民が昨年11月末に汚職問題で更迭されたアンドリー・エルマク前大統領府長官を好ましく思っていなかったことを考慮すると、ブダノウ氏の起用によって、ゼレンスキー大統領は政府の信頼回復を狙っているものとみられる。さらに、同大統領によるブダノウ氏の起用は、政府が戦時政策を転換していることを示しており、同氏がウクライナ侵攻終結に向け、重要な役割を担うことが期待されている。
ウクライナ侵攻開始から間もなく4年が経過しようとしているが、ウクライナ政府は戦争終結に向けた協議を続ける中で、西側諸国から具体的な安全の保証を得ることを目指している。英紙フィナンシャルタイムズによれば、ブダノウ氏は現在もロシア側と定期的に連絡を取り続けている数少ないウクライナ高官の1人であり、特に捕虜交換で実績を上げている。ウクライナと欧米の和平に向けた話し合いが進展すれば、ブダノウ氏はロシア側との協議を仲介する可能性があるため、進行中の交渉で貴重な戦力となり得る。
だが、これを実現するためには、まずロシアが米国主導の和平努力を支持し、交渉の内容に合意する必要がある。ロシアは現在、米国、欧州、ウクライナが提案した安全の保証を支持していない。ロシアはさらにウクライナに対し、同国のドネツィク州、ザポリッジャ州、ヘルソン州を割譲するよう要求している。この提案は、米国、欧州、ウクライナによって拒否され、和平交渉は行き詰まっている。とはいえ、両国の交渉が実現した場合、ブダノウ氏がロシア政府に精通していることと過去にロシアとの間で捕虜交換を実現した実績は、貴重な資産となり得る。
ウクライナで最も人気のある高官の1人であるブダノウ氏が大統領府長官としてどのように振る舞うのかは未知数だが、現時点では、ゼレンスキー大統領の決定はソーシャルメディア(SNS)上で国民から歓迎されている。ウクライナ情勢の専門家は、ブダノウ氏がゼレンスキー政権で今後どういった役割を果たすのか、また同氏が戦争終結にどう貢献するのかについて、強い関心を寄せている。



