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2026.01.07 11:00

次は宇宙だ、「軌道上AIデータセンター」にテック界の億万長者たちが巨額を賭ける理由

ロビンフッド共同創業者 兼 共同CEOのバイジュ・バット(Steve Jennings/Getty Images for TechCrunch)

しかし、課題は打ち上げコストにとどまらない。宇宙空間では重力や空気が存在しないため、水やファンを使ってAIチップを冷却することができない。代わりに、ラジエーターを使ってGPUから発生する熱を赤外線として宇宙空間へ放射する必要がある。だが、各衛星に搭載される十数基のGPUを十分に冷却できる表面積を確保しつつ、軽量かつ低コストなラジエーターを実現するには、技術的な課題が残る。加えて、チップを宇宙空間の放射線から保護する必要があり、重量増や設計の複雑化を招く要因となっている。

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さらに、ハードウェアの劣化や故障・事故のメンテナンスにかかるコストも無視できない。加えて、地球から約160〜2000キロメートルの低軌道(LEO)向けに設計されたこれらの衛星は、既存の衛星や宇宙ゴミと相まって軌道の混雑をさらに悪化させる可能性がある。また、何千もの大型ソーラーパネルからの反射光が、地上での光害を増大させることも懸念されている。これらの要因を踏まえると、軌道上データセンターが近い将来、地上のデータセンターよりも低コストで高い実用性を備えるかどうかは不透明だ。

しかし、これらの課題にもかかわらず、グーグルをはじめとする大手テック企業や、エイサーフラックスのようなスタートアップは、軌道上データセンターの実現に向けて資金を投じ続けている。ジョンストンによると、現在スタークラウドは米国防総省と協議を重ねており、打ち上げ予定の衛星に搭載されるGPUを活用して、防衛衛星からのデータを処理する計画が進められているという。さらに、OpenAI向けに5000億ドル(約78.4兆円)規模の大規模AIデータセンター「スターゲート」を開発中の大手データセンター建設会社クルーソー(Crusoe)は、2030年代初頭から5年間にわたり、スタークラウドから10ギガワットの電力をキロワット時当たり3セントで供給してもらうことを想定した、130億ドル(約2兆円)の意向表明書に署名したという。

バットは、エイサーフラックスの現状の顧客について明言を避けたが、政府による活用の可能性に言及し、その一例として、ミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」をはじめとする宇宙関連計画に対する軍の支出増加を指摘した。「軍は、特注の専門的な機能やサービスを常に購入し、通常よりもはるかに高い金額を支払う」とキルティは話す。また、彼によれば、衛星画像解析やその他の宇宙関連サービスの需要は既に存在しており、軌道上データセンターのスタートアップは、地上のAIデータセンターを置き換える構想の実現を待たずとも、収益を上げることが可能だという。

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だが、10年後には、この壮大な挑戦が実を結ぶ可能性もある。ベゾスをはじめとする一部のビリオネアは、10年後には新設されるデータセンターの全てが宇宙空間に建設され、その大半がAIの稼働に充てられるようになると予測している。「私の構想は、地球の周囲に文字どおり輪を築くことだ」と、バットは語った。

forbes.com 原文

編集=朝香実

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