たとえウクライナ侵攻を終結させる和平合意が成立したとしても、東欧には長期にわたる影響が残るだろう。ロシアによるウクライナ侵攻が4年近く続いていることを受け、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国は27日、対人地雷禁止条約(オタワ条約)から正式に脱退した。
同条約は、対人地雷の使用、備蓄、製造、移転を禁止している。1997年に採択された同条約の締約国は164カ国に上るが、米非営利団体「軍備管理協会(ACA)」は、中国、インド、パキスタン、ロシア、米国など、複数の主要国が加盟していないと指摘している。少なくともさらに欧州の5カ国が、近く対人地雷の製造や配備を開始する可能性がある。
北大西洋条約機構(NATO)に加盟するバルト3国とポーランドは、ロシアとその同盟国であるベラルーシとの国境沿いに配備する可能性を視野に、対人地雷の製造再開を検討すると表明した。この決定の背景には、ロシアが次の侵略先としてどこに目を向けるかという懸念があった。
脱退の理由について、バルト3国とポーランドの国防相は3月、共同声明で「対人地雷禁止条約の批准以来、当地域の安全保障状況は根本的に悪化している。ロシアおよびベラルーシと国境を接するNATO加盟国に対する軍事的脅威は著しく高まっている」と説明した。
これに続き、ロシアに隣接するフィンランドも対人地雷の製造を開始すると発表し、対人地雷禁止条約からの脱退を表明。来年1月10日に正式に脱退となる。ポーランドも2月20日に脱退する。
対人地雷禁止条約からの脱退に対する非難の声も
リトアニアの最高立法機関である一院制議会セイマスは5月、対人地雷禁止条約からの脱退を承認した。同国が国連事務総長に同条約からの脱退の意思を通知してからちょうど6カ月後となる今月27日、正式な脱退を完了した。エストニアとラトビアも同日に脱退した。
一方、地雷や不発弾の除去に取り組む英非営利団体「地雷対策機構(MAG)」は、この決定を非難した。「当団体はこれらの国々に対し、非締約国として条約が確立した規範を引き続き順守し、長年参加してきた対人地雷禁止条約締約国との関与を継続するよう求める。当団体は、ロシアの侵略行為やウクライナへの違法な侵攻、近隣諸国の正当な懸念といった状況を把握している。しかし、地雷が引き起こす無差別な危害と、紛争中や紛争終了後も長期にわたって民間人に与える影響を考慮すると、地雷の使用は決して容認できないという当団体の見解は変わらない」



