長年にわたり、ヘビは、条件反射に支配された無感情な生き物であり、思考も記憶も持たず、ただ這い回って生きている存在と認識されてきた。しかし、ここ10年で得られた数々の研究結果は、このような固定観念の再考を迫るものだ。こうした研究からは、ヘビに学習、記憶、ナビゲーションの能力があること、性格や社会的相互作用に近い行動さえ示すことが明らかになっている。
生物学者たちがヘビの生態の解明を進める中で、ヘビの知能は、動物認知科学における驚異的な発見の1つとして注目を浴びている。これまでの研究で具体的に何がわかったのか、以下で紹介していこう。
ヘビは経験から学ぶ
「ヘビが知能を持つ可能性」が、長い間ほぼ完全に無視されてきたのは、従来の方法では、彼らが実験課題を「パス」できなかったためだ。だが、こうした実験で用いられた迷路などの課題は、ほぼすべてが、もともと哺乳類や鳥類を対象に設計されたものであり、これらは本質的に、自然界におけるヘビの生態と相容れない。
これに対して、ヘビの生態を考慮した、生物学的に意味のある手法で行われた実験では、ヘビが間違いなく学習と記憶の能力を持つことが明らかになった。古典的な例として、1999年に学術誌『Animal Behaviour』に掲載された論文では、コーンスネーク(学名:Pantherophis guttatus)の幼体を対象に、空間学習能力が検討された。
この研究では、ヘビをアリーナ(開けた実験場所)に入れ、1つの開いているシェルター(隠れ家)と、複数の偽のシェルターの中から、正解を選んで脱出するように訓練した。4日間にわたって実験試行を繰り返すうちに、ヘビはより短時間で、またより直線的に、正しい出口へと到達し、アリーナから脱出するようになった。
注目すべきは、この結果が、学習能力と空間記憶能力の両方を示唆しており、単純な本能では説明できないことだ。ヘビは試行を繰り返すうちに、移動距離が短くなり、正解の出口周辺における活動量が増加した。つまり、ヘビはどこへ行くべきか、具体的にどうすればそこに到達できるかを記憶していたのだ。



