サイエンス

2026.01.14 17:00

ゾウが仲間の死に際して見せる、長期にわたる「複雑な行動」

Getty Images

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野生生物の研究者は何十年も前から、ゾウたちの奇妙な行動パターンを繰り返し目撃してきた。それは、群れの仲間が死んだときに、残されたゾウたちがしばしば何度も遺骸のもとに戻ってくるという行動だ。そして、鼻で遺骸や骨に触れる。遺骸のそばにじっと立ちつくし、異様なほど長い時間そのままで過ごす。母ゾウは、死んだわが子のそばに何日もとどまる。

そうした類いの行動は、人間の「悲嘆」に不思議なほど似ているように見える。にもかかわらず、人間の感情というレンズを通して動物の行動を解釈しても擬人化につながるだけだ、と警告されることは少なくない。だが、ゾウが死に対して繰り返し示す複雑な進化的反応に、研究者たちは驚嘆せずにはいられない。そうした反応は、単なる本能の域を超えているように思える。それどころか、並外れて情け深い行動に見える。

そして生物学研究によれば、そう見えるのは、ゾウが実際に情け深いからであるようだ。

ゾウは仲間の死を認識できる

動物界においては通常、死などの喪失に伴う悲嘆は、「悲しみ」や「意識的な内省」によって定義されるわけではない。むしろ研究者が目を向けるのは、死に対する反応として生じる一貫した測定可能な行動のうち、「好奇心や混乱、単なる刺激への反応」だけでは説明のつかない行動だ。

だがゾウでは、そうした行動が、ほとんどの種で見られるものよりもはるかに発展している。例えば、以下のような行動。

・遺骸に対して、長期間にわたって注意を向ける
・自分と同じ種の骨に、選択的にはたらきかける
・仲間が死んだ場所を繰り返し訪れる
・喪失のあとに社会的行動を変化させる

何よりも重要なのは、そうした行動パターンが、複数の集団や環境(さまざまな家族、さまざまな国)をまたいで観察されてきたことだ。これはそうした行動が、一回限りの例外的な異常行動ではないことを示唆している。

こうした「哀悼」に似た行動を調べた最初期の体系的研究の一つが、2000年代前半にケニアで実施されたフィールド観察にもとづくものだ。『Biology Letters』で発表されたこの研究の狙いは、ゾウの骨に対するアフリカゾウ(学名:Loxodonta africana)の反応を調べ、ほかの動物の骨への反応と比較することにあった。この研究では、野生のゾウの集団に対して、ゾウ、スイギュウ、サイのさまざまな頭骨、牙、四肢の骨を見せた。

結果は驚くべきものだった。ゾウが、ゾウの頭骨と牙を調べるのに費やした時間は、ほかの動物の骨に比べて有意に長かったのだ。ゾウたちは、鼻や足でゾウの骨にやさしく触れ、その後しばしば静かに立っていた。とりわけ注目すべきは、研究対象のゾウたちとは血縁関係にない、なじみのない個体の骨に対しても、その反応が生じたことだ。

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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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